Lab Seminar (October 3, 2022)

海外からの研究生と研究室見学の3年生を迎えて、学会報告と研究紹介を行いました。

〇学会参加報告(H.K.) 第 110回日本解剖学会関東支部学術集会 (October1, 2022)

  • 細胞膜損傷によるマクロバノサイトーシス誘樽と開口排出機能
    骨格筋の筋細胞は損傷と修復を繰り返している。そのメカニズムを解明するために In
    vitroで筋繊維に傷をつけ、蛍光物質を投与すると、損傷部分から蛍光物質が取り込まれ
    て、時間が経つと、細胞内で膜小胞に包まれて顆粒となり、細胞外へ排出される様子が
    確認できた。さらに、 Invivoでもマウスの腹腔内に蛍光物質を投与した後に筋繊維の細
    胞を観察したところ、蛍光物質が顆粒となって排出される様子が見られた。
  • BRAG2によるインテグリンの輸送制御を介した海馬神経細胞の樹状突起形成機構
    海馬神経細胞の樹状突起の細胞膜表面には、インテグリンという細胞外基質とアクチ
    ン繊維等を架橋するタンパク質が存在する。 Arf6の働きで BRAG2が活性化され、イン
    テグリンが細胞膜表面から膜小胞に取り込まれると、樹状突起が退縮する。
  • 大脳皮質を作る細胞(アストロサイト)が発生期に適切に分布する仕組み
    発生期の大脳皮質では、様々な種類の細胞が下層から上層へ移動して、最終的に 6層
    を作る。細胞を標識してみると、一部行ったり来たり奇妙な動きをしている細胞がいる
    ことが分かった。その細胞はアストロサイトであることがわかり、血管に沿って移動し
    ていた。そして、血管内皮細胞とアストロサイトの細胞膜表面で相互作用できるタンパ
    ク質を同定した。

〇研究紹介

28 October 2019 EMBO Mol Med (2019)11:e10695

Excess hydrogen sulfide and polysulfides production underlies a schizophrenia pathophysiology (統合失調症の病態生理の根底にある過剰な硫化水素およびポリスルフィド産生)

Masayuki Ide, Tetsuo Ohnishi, Manabu Toyoshima, Shabeesh Balan, Motoko Maekawa, Chie Shimamoto-Mitsuyama, Yoshimi Iwayama, Hisako Ohba, Akiko Watanabe, Takashi Ishii, Norihiro Shibuya, Yuka Kimura,
Yasuko Hisano, Yui Murata, Tomonori Hara, Momo Morikawa, Kenji Hashimoto, Yayoi Nozaki, Tomoko Toyota, Yuina Wada, Yosuke Tanaka, Tadafumi Kato, Akinori Nishi, Shigeyoshi Fujisawa, Hideyuki Okano,
Takeo Yoshikawa

Abstract
Mice with the C3H background show greater behavioral propensity for schizophrenia, including lower prepulse inhibition (PPI), than C57BL/6 (B6) mice. To characterize as-yet-unknown pathophysiologies of schizophrenia, we undertook proteomics analysis of the brain in these strains, and detected elevated levels of Mpst, a hydrogen sulfide (H2S)/polysulfide-producing enzyme, and greater sulfide deposition in C3H than B6 mice. Mpst-deficient mice exhibited improved PPI with reduced storage sulfide levels, while Mpst-transgenic (Tg) mice showed deteriorated PPI, suggesting that “sulfide stress” may be linked to PPI impairment. Analysis of human samples demonstrated that the H2S/polysulfides production system is upregulated in schizophrenia. Mechanistically, the Mpst-Tg brain revealed dampened energy metabolism, while maternal immune activation model mice showed upregulation of genes for H2S/polysulfides production along with typical antioxidative genes, partly via epigenetic modifications. These results suggest that inflammatory/oxidative insults in early brain development result in upregulated H2S/polysulfides production as an antioxidative response, which in turn cause deficits in bioenergetic processes. Collectively, this study presents a novel aspect of the neurodevelopmental theory for schizophrenia, unraveling a role of excess H2S/polysulfides production.

C3H系統のマウスは、C57BL/6(B6)マウスに比べ、プレパルス抑制(PPI)が低いなど、統合失調症に対する行動傾向が強い。統合失調症の未知の病態を明らかにするために、これらの系統の脳のプロテオミクス解析を行ったところ、硫化水素(H2S)/ポリサルファイド生成酵素であるMpstのレベルが高く、B6マウスよりもC3Hマウスの方が硫化物沈着量が多いことがわかった。Mpst欠損マウスでは、貯蔵硫化物量が減少しPPIが改善したが、Mpstトランスジェニック(Tg)マウスではPPIが悪化したことから、「硫化ストレス」がPPI障害と関連している可能性が示唆された。ヒトの試料を分析した結果、統合失調症ではH2S/ポリサルファイド生成系がアップレギュレートされていることが明らかになった。メカニズム的には、Mpst-Tg脳ではエネルギー代謝の減衰が見られ、母体免疫活性化モデルマウスでは、典型的な抗酸化遺伝子とともに、H2S/ポリサルファイド生成の遺伝子が、一部エピジェネティック修飾を介してアップレギュレートされていることが示された。これらの結果は、脳の発達初期に炎症/酸化的な障害が起こると、抗酸化反応としてH2S/ポリスルフィド産生が亢進し、その結果、生体エネルギー過程の障害が引き起こされることを示唆している。本研究は、統合失調症の神経発達理論の新たな側面を提示し、過剰なH2S/ポリスルフィド産生の役割を解明するものである。

硫化水素の産生過剰が統合失調症に影響-創薬の新たな切り口として期待-

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