見慣れた日々に、かくれている宝物

“What is essential is invisible to the eye.”
「かんじんなことは、目に見えないんだよ」

— Antoine de Saint-Exupéry, The Little Prince
(サン=テグジュペリ『星の王子さま』)

「かんじんなことは、目に見えないんだよ」は、サン=テグジュペリの『星の王子さま』で、キツネが王子さまに伝える言葉です。人や物の大切さを知るには、外見を眺めるだけでは足りない。ともに過ごした時間や、そこに育まれた関係に目を向ける必要がある。この言葉は、そのことを静かに教えてくれます。Le Petit Prince

王子さまは、自分の星に残してきた一輪のバラを、特別な存在だと思っていました。ところが地球で、同じようなバラがたくさん咲いているのを見つけ、悲しくなります。自分のバラも、ありふれた花にすぎないように思えたからです。やがてキツネとの交流を通じて、その花が自分にとって特別である理由を理解していきます。

王子さまは、そのバラに水をやり、風から守り、話に耳を傾けてきました。その積み重ねが、一輪の花をかけがえのない存在にしていたのです。花の姿は目に映ります。しかし、その花を気遣った日々や、心配した気持ちは、外から眺めてもわかりません。「目に見えない」とは、こうした関係の歴史を指していると考えられます。

このことは、私たちの暮らしにも重なります。長く使った道具や、誰かから届いた短い手紙が、ほかの物では代えられないことがあります。その価値には、持ち主だけが知る出来事や記憶が含まれています。人との関係でも、何げない会話を交わし、困ったときに助け合ううちに、相手の存在が日々の支えになっていきます。

現代社会では、目に見えるものや数値を追い求める面が多くあります。教育の場に引き寄せて考えるなら、成績や成果だけでは捉えきれないものへの注意ともいえると思います。学生が疑問を抱き、失敗を振り返り、もう一度取り組もうとする過程には、評価が定まる前から大切な変化が生まれています。それに気づくには、日頃の関わりと、話を聴く時間が必要なのだろうと思います。

キツネの教えは、結びつきを持った相手への責任にも及びます。 大切に思う気持ちは、相手を気遣い、約束を守り、必要なときに応える行動につながっていきます。目に見えない信頼は、そうした一つひとつの行為によって支えられているのでしょう。私たちは、すぐに確かめられるものを手掛かりに、物事を判断します。それでも、ときには判断を急がず、その人が歩んできた時間や、言葉にならない思いに耳を澄ませたいものです。身近な人や物に、これまでどれほど支えられてきたのか。この言葉を読み返すと、見慣れた日常にも、まだ気づいていなかった大切さがあるように思えます。

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