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ミクログリアのエクソソームがアストロサイトを“神経毒性化”する―パーキンソン病の新たな炎症機構
Pharmacological Research, 2025
- Volume:219 Article number:107908 Received:2 July 2025 Revised:1 August 2025
- Accepted:11 August 2025 Available online:13 August 2025
Exosome-mediated microglia-astrocyte interactions drive neuroinflammation in Parkinson’s disease with Peli1 as a potential therapeutic target 「エクソソームを介したミクログリアとアストロサイトの相互作用はパーキンソン病における神経炎症を促進し、Peli1は潜在的な治療標的となる」
Min Guo et al.
Department of Neurology, Huashan Hospital, Fudan University, Shanghai, China
要旨
神経炎症はパーキンソン病(PD)の主要な特徴であり、ミクログリアの活性化と、アストロサイトの神経毒性表現型への変化によって特徴づけられ、これらが神経炎症をさらに増悪させる。PDでは、ミクログリアが神経毒性反応性アストロサイト(A1、A1様、あるいは神経炎症性反応性アストロサイト)の形成を重要な形で促進するが、その基盤となる機序は依然として不明である。エクソソームが細胞間情報伝達における重要なメッセンジャーとして機能することが知られていることから、本研究では、ミクログリア由来エクソソームが神経毒性アストロサイトへの表現型変化に関与するかを検討した。
その結果、PLX3397によってミクログリアを除去すると、α-シヌクレインpre-formed fibrils(α-syn PFF)によって誘導される神経毒性反応性アストロサイトが有意に減少した。さらに重要なことに、精製したミクログリア由来エクソソームだけで、マウスにおいてアストロサイトを神経毒性表現型へと極性化させるのに十分であった。
これを補完する実験として、ミクログリア培養上清からエクソソームを除去する方法、およびGW4869によってエクソソーム分泌を阻害する方法を用いたところ、いずれの場合もアストロサイトの神経毒性表現型への変化が軽減された。これにより、この現象がエクソソーム依存的な機序によることが確認された。
機序的には、PFFによって活性化されたミクログリア由来エクソソームには、炎症促進因子と毒性を有するα-synオリゴマーが含まれていた。これらのエクソソーム内因子は、アストロサイトを神経毒性表現型へ誘導するとともに、ニューロンを直接障害することで、神経炎症を増悪させた。
さらに、これらのエクソソームを線条体内へ注入すると、線条体および黒質のアストロサイトに取り込まれ、アストロサイトの増殖と神経毒性表現型への変化を同時に誘導した。
加えて、本研究では、ミクログリアに選択的に多く発現するE3ユビキチンリガーゼであるPeli1を、ミクログリア活性化およびエクソソーム放出を制御する重要な因子として同定した。Peli1を阻害すると、ミクログリアの活性化および神経毒性アストロサイトへの変化が軽減された。
さらに、神経毒性アストロサイトとミクログリアの間にはフィードバックループが存在し、神経毒性アストロサイトがミクログリアにおけるPeli1発現を増加させることで、神経炎症がさらに促進されることが明らかとなった。
本研究は、ミクログリア由来エクソソームが神経毒性アストロサイトの活性化を制御する重要な因子であることを示すとともに、Peli1をPDに対する新たな治療標的として提示するものである。

結果
α-syn PFFを線条体へ投与したPDモデルマウスでは、投与1か月後に線条体および黒質緻密部(SNpc)でGFAP陽性アストロサイトが増加し、その多くが神経毒性表現型の指標であるC3d陽性を示した。CSF1R阻害薬PLX3397でミクログリアを除去すると、GFAP陽性細胞数とC3d陽性アストロサイトの割合はいずれも有意に低下した。また、PFF投与6か月後に認められたTH陽性ドパミン神経細胞の減少もPLX3397により抑制され、ミクログリアが神経毒性アストロサイト誘導と神経変性に関与することが示された。次に、α-syn PFFで活性化したミクログリア由来エクソソーム(AM-Exo)をマウス線条体へ投与すると、静止期ミクログリア由来エクソソーム(RM-Exo)と比較してGFAP陽性およびC3d陽性アストロサイトが有意に増加した。初代アストロサイトを用いたin vitro実験でも、AM-Exoによりpan-reactiveおよびA1関連遺伝子の発現が上昇し、C3d陽性細胞が増加する一方、S100陽性細胞は減少した。さらに培養上清中のTNF-α、IL-6、IL-1βも増加した。AM-ExoにはiNOS、TNF-α、IL-1β、IL-6のmRNAに加えて、total α-synおよび病的α-synオリゴマーが多く含まれていた。活性化ミクログリアの条件培地からエクソソームを除去すると、C3d陽性アストロサイトの増加や炎症性サイトカイン上昇が軽減し、エクソソーム分泌阻害薬GW4869でも同様の抑制効果が得られた。さらに、E3ユビキチンリガーゼPeli1はPFF刺激後のミクログリアで選択的に高発現し、ヒトPD患者の単一核トランスクリプトームデータでもPeli1発現が健常対照より有意に高かった。ミクログリアでPeli1をノックダウンすると、AM-ExoによるA1関連遺伝子、C3d、TNF-α、IL-6、IL-1βの増加が抑制され、in vivoでも線条体およびSNpcの神経毒性アストロサイト誘導が軽減された。最後に、神経毒性アストロサイト由来の条件培地を初代ミクログリアへ24時間添加するとPeli1発現が有意に上昇した。以上から、Peli1を介したミクログリア由来エクソソームがアストロサイトを神経毒性化し、そのアストロサイトが再びミクログリアのPeli1を増加させる正の炎症性フィードバックループがPDの神経炎症を増幅することが示された。
議論
本研究は、パーキンソン病(PD)におけるミクログリア–アストロサイト間相互作用の新たな機序として、ミクログリア由来エクソソームが神経毒性アストロサイトへの変換を促進することを示した。先行研究では、活性化ミクログリアがIL-1α、TNF-α、C1qなどの可溶性因子を介してA1様アストロサイトを誘導することが知られていたが、本研究では、α-syn PFFで活性化したミクログリア由来エクソソーム(AM-Exo)自体が、in vitroおよびin vivoの両方で神経毒性アストロサイトを誘導するのに十分であることが示された。また、条件培地からエクソソームを除去した場合や、GW4869でエクソソーム放出を抑制した場合にはアストロサイトの神経毒性化が軽減したことから、可溶性サイトカインだけでなくエクソソームが重要な病態伝達因子であると考えられる。
AM-ExoにはiNOS、TNF-α、IL-1β、IL-6などの炎症関連mRNAに加え、α-synモノマーおよび病的α-synオリゴマーが含まれていた。このため、エクソソームは炎症性情報だけでなく、異常α-synの「seed」もアストロサイトへ運搬し、炎症とα-syn病理の双方を増幅する可能性がある。ただし、エクソソーム内α-synが実際にアストロサイト内で凝集を促進し、さらに他領域へ病理を伝播させるかについては今後の検証が必要である。
さらに重要なのが、E3ユビキチンリガーゼPeli1の役割である。Peli1はPFF刺激後のミクログリアで選択的に増加し、ミクログリア活性化とエクソソーム放出の上流因子として機能した。Peli1を抑制するとAM-Exoによる神経毒性アストロサイト誘導が減弱した。一方、神経毒性アストロサイトが分泌する炎症性因子は、逆にミクログリアのPeli1発現を上昇させた。したがって、Peli1上昇→エクソソーム放出→アストロサイト神経毒性化→炎症性因子放出→ミクログリアPeli1再上昇という正のフィードバックループが形成され、PDの神経炎症を持続・増幅すると考えられる。
また、明確なTH陽性ニューロン脱落が生じる前からミクログリアと神経毒性アストロサイトの強い活性化が認められたことから、著者らは神経細胞死が進行する前の早期段階に、グリア炎症を抑制する治療介入の時間的窓が存在する可能性を指摘している。以上より、Peli1およびミクログリア由来エクソソームを標的とすることは、PDにおける神経炎症を抑制する新たな治療戦略となる可能性がある。






