Hiljaa hyvä tulee

フィンランドのことわざとして紹介される「静かに続ける人が、最後にいちばん遠くへ行く」という言葉は、厳密には古くから伝わるフィンランド語の定型的なことわざそのものというより、フィンランド的な価値観を日本語で美しく表現した言葉と考えられます。フィンランド語には、近い意味をもつ表現として “Hiljaa hyvä tulee.”、すなわち「静かに、あるいはゆっくりと、よいものが生まれる」ということわざがあります。また、「急いでも遠くへは行けない」という趣旨の表現もあり、これらは急がず、慌てず、目立たず、着実に進むことの大切さを伝えています。

この言葉が示しているのは、一時的な勢いや派手な努力よりも、静かに続ける力のほうが、長い時間の中では大きな成果につながるという人生観です。声高に努力を語る人や、短期間だけ熱心に取り組む人よりも、日々の小さな実践を淡々と積み重ねる人のほうが、最終的には深く、遠くまで到達することがあります。そこには、「急がなくてよい」「目立たなくてよい」「ただ止まらずに続ければよい」という穏やかな励ましが含まれています。

この考え方は、研究、教育、臨床、芸術、語学、身体訓練など、長い時間をかけて成熟していく営みによく合います。たとえば研究においては、短期的な成果や外からの評価に一喜一憂するよりも、観察し、考え、記録し、修正するという地道な反復こそが、やがて大きな知的到達を生みます。教育においても、日々の小さな理解や経験の積み重ねが、時間を経て確かな力になります。

日本語の表現でいえば、「継続は力なり」「急がば回れ」「雨垂れ石を穿つ」に近い意味をもちます。ただし、「静かに続ける人が、最後にいちばん遠くへ行く」には、それらよりもさらに内省的で、静謐な響きがあります。派手な歩みでなくてもよい。今日も静かに続ける人だけが、ふと振り返ったとき、誰よりも遠い場所に立っている――そのような静かな希望を含んだ言葉であると思います。研究も、コンスタントに頑張る人が成果を出し、論文もしっかりまとめることができます。

ほんとうに出会った者に別れはこない
あなたはまだそこにいる
目をみはり私をみつめ 繰り返し私に語りかける
あなたとの思い出が私を生かす
早すぎたあなたの死すら私を生かす
初めてあなたを見た日からこんなに時が過ぎた今も 

「あなたはそこに」(谷川俊太郎)

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