青葉の海を渡る風のアリア

五月も半ばになりますと、光はすでに初夏の手触りを帯びています。それでも朝の風には、春が最後に残していった薄い絹のような冷たさがあり、窓辺のカーテンをそっと揺らしては、眠りの底に沈んでいた記憶を起こしていきます。道端の若葉は、雨に洗われるたびに深く、瑞々しくなり、梢のあいだを渡る鳥の声は、空の青さを少しずつ高くしているように聞こえます。

この季節には、咲き終えた花の名残と、これから繁るものの予感とが、同じ庭の中で静かに息をしています。桜の華やぎは遠い夢となり、代わって薔薇の香りが夕暮れを満たすころ、人は知らず知らず、過ぎてきた日々とまだ来ぬ日々のあわいに立っています。制服の白さ、田に張られた水のきらめき、少し汗ばむ午後の坂道。どれもが胸の奥に、言葉になる前の懐かしさを置いていきます。軒先の燕は忙しく空を縫い、遠くの山は霞を脱ぎ捨てて、日に日に輪郭を濃くしていきます。日暮れには、草の薫りを含んだ風が町を通り抜け、誰かの帰りを待つ灯りが、まだ明るい空の下でほのかにともり始めます。

五月中旬は、急ぎ足の夏へ向かう小さな踊り場のような季節です。世界は明るさを増しながらも、どこか慎ましく、あまりに美しいものほど長くは留まらないことを教えてくれます。ほんの短い雨上がりの虹も、夕雲の淡い金色も、見逃せば二度と同じ姿では戻ってきません。だからこそ、今日吹く風を、今日の光を、掌に受けた一滴の雨を、私たちは大切に見つめていたいと思います。季節が次の扉を開けるその前に、心の中で静かに、五月の緑へ深く頭を垂れたい。

学内では、講義や実習が盛んに実施されています。私たちの研究室が担当する医学類の実習も1週目が終了し、二週目に入ろうとしています。昨年度末で多くの熟練した職員や学生が、次のステージへと旅立っていきました。彼らに負けないように、研究と教育を推進したいものです。合わせて一緒に戦ってくれる新たな同士を募集中です。研究と解剖学教育に興味がある方は、ぜひお声がけください。

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