Lab Seminar (March 27, 2023)

2022年度最後のラボセミナーは、第128回日本解剖学会総会・全国学術集会の学会報告会を行いました。オンサイトでの学会で刺激を受けたことを次のステップにつなげたいものです。

SC02-2 筋萎縮性側索硬化症モデルにおける免疫環境と、ミクログリア機能連関の解明

ALSにおいて、病巣に浸潤したT細胞がミクログリアにおける神経栄養因子IGF-1の産生を誘導し、神経保護的に機能することが分かっているが、ALSにおける末梢の免疫環境がミクログリアに与える影響については不明な点が多い。全身の免疫環境がALS病態に与える影響を検証するために、獲得免疫反応性の異なるC57BL/6(Th1有意)、とBALB/c(Th2優位)の2系統のALSモデルマウス(G93A(B6)G93A(Balb))を作成し、表現型を比較した。

SC01-3 放射状グリア細胞内のmRNA-タンパク輸送ダイナミクスとその進化的意義

脊椎動物の脳は、放射状グリア細胞(RG)と呼ばれる神経幹細胞の増殖・分化によって形作られる。マウスでは、細胞周期調節タンパク質CyclinD2をコードする遺伝子Ccnd2のmRNAが3’UTR上の配列(CTE)依存的にRG才能の基底膜側突起の末端まで輸送される。RG細胞におけるCcnd2のmRNA輸送とその進化的意義を解明することを目的とした。

SA1-1 グリア依存的/非依存的な脳の細胞残骸除去システム

脳損傷部位において、ミクログリアとアストロサイトが協調して細胞残骸の貪食に働くことが近年分かってきていたが、損傷部位において多量の細胞残骸が蓄積するため、グリア貪食以外の除去メカニズムが存在すると考えられていた。そのメカニズムの解明を目的として研究を行った。

A1-2 成体ミクログリア-ニューロン相互作用を介したスパインシナプス除去メカニズムの解明

ミクログリアは活性化したとき、貪食した物質を分解する過程においてミトコンドリアから活性酸素種(ROS)を産生することが分かっており、ミクログリアのミトコンドリア機能が細胞内代謝を通してシナプスリモデリングを制御していると仮説立てて検証した。

SA1-4 シナプス局所的なアポトーシスがマイクログリアによるシナプス貪食を促進する

シナプスは補体によってタグ付けされた後、ミクログリアによって貪食されることが分かっていたが、補体によるタグ付けがシナプス特異的に起こるのか、タグ付けのメカニズム、多数のシナプスの内、特定のシナプスをタグ付けするメカニズム等は不明であった。この研究は、高解像度ライブイメージングによってそれらのメカニズムを解明することを目的として行われた。

3OpmE-02 精子形成におけるマンシェット輸送を担う新たなキネシンモーターの解析

不妊症が社会問題となる今、男性不妊症の原因のおよそ80 %を占める精子べん毛運動障害のしくみの理解が望まれる。精子べん毛伸長期には細胞核周辺の細胞質が絞られる過程がある。この時に核の周りにマンシェットと呼ばれる微小管でできたスカート状の構造ができることがわかっていた。マンシェット上で何らかのモーター分子が正常なべん毛運動に必要なタンパク質や細胞小器官を輸送している(=マンシェット輸送)のではないか?という仮説が提唱されてきたが、モーター分子が特定されていないため、研究が進んでいなかった。これに対し、我々が分子モーターキネシンの一種であるKIF6をマウスでノックアウトし、そのフェノタイプからKIF6がマンシェット輸送を担う分子ではないかという有力な手がかりを得ている。

3OpmH-06 F-actin配向プローブPOLArlSactとF-actin複合体のクライオ電子顕微鏡解析と、それに基づく改良型POLArlSactの開発

我々が最近開発したPOLArISactは、蛍光偏光顕微鏡を用いてアクチン線維(F-actin)の配向を可視化するための遺伝子にコードされた蛍光プローブである。F-actinに結合したPOLArISactは線維の長軸に平行な偏光方向の蛍光を発するため、蛍光偏光顕微鏡で解析すれば、F-actinの配向情報が得られる。POLArISactを細胞に発現させると、アクチン線維は明るく標識されるが細胞質の背景シグナルは低く抑えられるため、通常の蛍光F-actinプローブとしても非常に有用である。一方、ラメリポディアなど動的なアクチン構造が標識されにくいという課題があった。今回我々は、クライオ電子顕微鏡により、F-actinとPOLArISactの複合体の構造を高解像度で決定した。

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