2026年に開催されたFENS Forum 2026において、スタッフMが注目したポスター発表をもとに、神経発達、神経変性疾患、精神疾患に関する最新の研究動向を紹介します。今回の報告では、特にミクログリアとアストロサイトの相互作用、ミトコンドリアの品質管理、細胞外小胞を介した細胞間情報伝達が共通する研究テーマとして浮かび上がりました。
神経発達に関する研究では、スイス・ローザンヌ大学の研究グループが、Cx3cr1遺伝子欠損マウスを用いて、ミクログリアの機能異常が海馬アストロサイトの成熟に及ぼす影響を報告しました。生後2~3週齢ではアストロサイトの密度と占有体積が増加し、生後2週齢ではミトコンドリア密度が低下しました。一方、成体ではこれらの形態学的変化が正常化しており、発達初期におけるミクログリアとアストロサイトの相互作用の重要性が示唆されました。
ミトコンドリアの品質管理に着目した研究も注目されました。ハンチントン病モデルでは、アストロサイトにおけるCB1受容体シグナルの活性化が、異常なミトコンドリアやタンパク質凝集体の除去を促進し、エネルギー代謝や運動機能の改善につながる可能性が報告されました。また、出生前の環境要因を利用した神経発達障害モデルでは、ミトコンドリア機能に作用する薬剤の組み合わせによって、多動性や社会的相互作用の異常が改善することが示されました。ただし、その効果には性差が認められ、治療戦略の検討には慎重な評価が必要です。
神経変性疾患では、遺伝性痙性対麻痺SPG80の原因となるUBAP1変異について、皮質脊髄路ニューロンの選択的変性や、エンドソーム・リソソーム系とミトコンドリアの機能障害が報告されました。さらに、ALSおよび前頭側頭型認知症に関連するCHCHD10変異の研究では、運動ニューロンでマイトファジーによる適応的応答が十分に誘導されないことが、神経細胞の選択的脆弱性に関与する可能性が示されました。
細胞外小胞に関する研究では、治療抵抗性うつ病患者の神経細胞由来エクソソームにおいて、ミトコンドリア関連指標とエピジェネティックな制御機構との関連が報告されました。また、アルツハイマー病患者由来のアストロサイト性エクソソームが、神経細胞のシナプス機能やミトコンドリア関連遺伝子の発現に影響する可能性も提示されました。
FENS2026を通じて、神経疾患の病態をニューロン単独の異常として捉えるのではなく、グリア細胞、細胞内小器官、細胞間情報伝達の相互作用から統合的に理解する研究の重要性が示されました。多くは前臨床段階の成果ですが、神経発達障害から神経変性疾患までを横断する新たな研究課題と治療標的を考えるうえで、有意義な知見が得られていました。
わたしたちも研究成果を刈り取る「実りの秋」としたいものです。















FENS2026の写真提供:スタッフI