医学・歯学を学ぶ学生にとって、人体の構造を自らの目で確かめる解剖学実習は、医療の基礎を築く大切な学びの場です。その実習を支えているのが、自らの身体を医学・歯学の教育と研究に役立ててほしいと願う方々の献体です。『解剖学への招待』は、篤志解剖全国連合会が編集し、日本篤志献体協会が発行する年刊の文集で、献体を志す方々の手記と、解剖学実習を終えた学生の感想文を収めています。
本書は、それまで別々に刊行されていた献体者の文集と学生の感想文集を合わせ、2003年度に現在の形で刊行が始まりました。身体を託す側と、その身体から学ぶ側の言葉が一冊に収められていることに、本書の大きな特徴があります。献体の意義を制度や理念として理解するだけでなく、それを支える一人ひとりの人生や思いに触れることのできる文集です。
会員の手記からは、献体という選択の背景にある思いや、これからの医療を担う学生への願いを知ることができます。一方、学生の感想文は、ご遺体と向き合い、人体について学んだ経験を、自分自身の言葉で振り返るものです。両者を読み合わせることで、実習室での学びが、献体者の生前の意思や、ご家族の理解と協力によって成り立っていることを、改めて考えさせられます。
解剖学実習には、教科書で得た知識を確かめ、人体の複雑さや個人差を理解する役割があります。同時に、人の身体を扱う責任や、生命への敬意について考える機会でもあります。本書は、そうした学びを学生自身が振り返り、その経験を献体に関わる方々や社会に伝える役割を担っています。実習を控えた学生には、これから始まる学びの意味を考えるために、実習を終えた学生には、自らの経験を見つめ直すために読んでほしい冊子です。
