毎年10月10日は「世界メンタルヘルスデー」です。心の健康への関心を高め、精神疾患に対する偏見をなくし、正しい知識を広めるために、世界精神保健連盟が1992年に始めました。世界保健機関(WHO)もこの取り組みを支援し、各国で啓発活動が行われています。自分自身の心の状態を振り返るとともに、必要な支援を誰もが受けられる社会について考える日です。
心の健康とは、単に精神疾患がない状態を指すものではありません。日々のストレスに対処し、自分の力を発揮しながら学び、働き、人との関係を築いて生活するための基盤でもあります。その状態には、身体的な要因に加え、家庭や職場の環境、経済的な困難、暴力や差別など、さまざまな条件が関わっています。心の不調を「気の持ちよう」や「努力不足」で片づけることはできません。
世界メンタルヘルスデーの大切な役割の一つは、こうした誤解や偏見を見直すことです。精神疾患や障害のある人を、診断名や先入観だけで捉えず、その人の経験や生活に目を向ける必要があります。日本でも、厚生労働省による情報発信や啓発イベントが行われてきました。シルバーリボン運動に関連したライトアップなども、心の健康を身近な問題として考えるきっかけになっています。
身近な人への支援は、相手の話に耳を傾けることから始まります。厚生労働省が進める「心のサポーター」の養成でも、正しい知識と理解を持ち、家族や同僚などの話を聴く姿勢が重視されています。励ましや助言を急ぐ前に、本人が何に困り、どのような支えを求めているのかを確かめたいものです。相談を受けた人だけで抱え込まず、必要に応じて専門的な支援につながれる関係を築くことも大切です。
一方、心の健康を守る責任を、個人の努力や周囲の善意だけに委ねることはできません。学校や職場の環境を整え、相談しやすい窓口を設け、地域で医療や生活支援を受けられる体制を充実させる必要があります。大学や研究室でも、学業や研究の成果だけでなく、一人ひとりが無理なく学び、働ける環境に目を向けることが求められます。
10月10日を一日の催しで終わらせず、日常の言葉や接し方、組織のあり方を見直す機会にしたいと思います。困ったときに助けを求められること、その声が受け止められること。心の不調があるときにも尊厳を守られ、安心して暮らせる社会をつくることが、世界メンタルヘルスデーの目指すところです。
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/mental_health_day/index.html
