11月に神経解剖学講義と実習が開講されます。事前に平易な教科書を読んでおくと、講義と実習の理解が深まります。
医学群医学類2年生を対象とした神経解剖学講義・実習(コース#7神経系の一環として)が開講します。神経解剖学の講義と実習は、当研究室のスタッフが実習を担当します。教科書は、「解剖実習の手引き」(改訂第11版、著者:寺田春水・藤田恒夫)です。神経疾患に罹患した患者の基本的診療ができるようになるために、神経系の正常構造と機能の理解を目指します。
履修学生は、実習の前に教科書を通読してくる必要があります。また教科書だけでなく「ネッタ―解剖学図譜」「解剖学カラーアトラス」「グレイ解剖学 原著第4版」「プロメテウス解剖学 コア アトラス」などのアトラスを持参し、実習に臨んでください。
講義
神経解剖1 脳の概観 髄膜・血管系 脳幹 小脳1
神経解剖2 脳幹 小脳2
神経解剖3 終脳1 脳室
神経解剖4 終脳2 神経伝導路1
神経解剖5 間脳 神経伝導路2
*ノミナ小テストがあります。
実習
神経解剖実習1 解剖実習の手引き §92-97 血管 髄膜 脳幹 小脳など
神経解剖実習2 解剖実習の手引き §98-102 第4脳室 脳幹 大脳皮質など
神経解剖実習3 解剖実習の手引き §103-106 大脳辺縁系 大脳基底核 間脳など
神経解剖実習4 §107 脳断面の作製 全体をもう一度総復習する。
教科書
解剖実習の手引き 改訂11版 著者:寺田春水・藤田恒夫 出版社:南山堂
その他の学習リソース
参考書:神経解剖学ノート 著者:寺島敏雄 出版社:金芳堂
*講義資料にも使用されています。
”本書の原書は、神戸大学の講義資料で、「わかりやすい図版・平易な解説・簡潔にまとまっている」という評判を得て、全国へ広まったものである。書籍化にあたり、原書のエッセンスは残したまま、図版をすべてカラーにして作成し直し、内容を充実させた。神経解剖学の初学者が最初に手にするテキストとして最もふさわしい一冊であり、別のテキストで挫折しそうになった/してしまった人の、再入門書としてもぜひおすすめしたい。また、医学生のみならず、神経科学を志す理工系学生にもおすすめである。” (概要より抜粋)

参考書:病気がみえる Vol.7 脳・神経 Medic Media
*電子資料がついていて、神経系の立体構造を理解するのに役立ちます。
参考書:ハインズ神経解剖学アトラス第4版 著者:Duane E. Haines (佐藤二実訳) 出版社:メディカルサイエンスインターナショナル
参考書:臨床のための脳局所解剖学 著者:宜保浩彦 出版社:中外医学社
参考書:臨床のための神経機能解剖学 著者:後藤文男 出版社:中外医学社
参考書:臨床のための脳と神経の解剖学 著者:Paul A. Yongら 監訳:村上徹 櫻井武 出版社:メディカルサイエンスインターナショナル
データベース:e-Anatomy イメージングアトラス 脳のMRI軸位断など情報が多数掲載されている。
https://www.sciepro.com/3d-models
データベース:脳神経病理データベース 東京都医学総合研究所
データベース:医学生のための中枢神経の組織病理eラーニング(サンプルサイト)東京都医学総合研究所
※閲覧にはID/Passwordが必要です。(公財)東京都医学総合研究所神経病理解析室まで発行依頼をお願いします。
データベース:東京大学脳神経外科 頭部3DCGデータベース 東京大学医学部附属病院脳神経外科

脳を「立体」で学ぶ――3D脳アトラスで広がる神経解剖学の世界
脳の解剖学を学ぶとき、教科書の模式図やMRI・組織切片だけでは、構造同士の位置関係を直感的に理解することが難しい場合があります。大脳皮質の内側に視床や大脳基底核がどのように配置され、海馬や扁桃体がどこに位置し、白質線維がどの方向へ走行しているのか。こうした三次元的な関係を理解するうえで、近年充実してきた「3D脳アトラス」は非常に有用です。
3D脳アトラスでは、脳を自由に回転させたり、透明度を変えたりしながら、特定の領域だけを表示できます。また、冠状断、矢状断、水平断と3Dモデルを対応させて観察できるものもあり、従来の二次元画像では把握しにくかった深部構造の位置関係を直感的に学ぶことができます。
Neurotorium 3D Brain Atlas
比較的利用しやすいものの一つが、Neurotorium 3D Brain Atlasです。
ブラウザ上でヒト脳を360度回転させ、さまざまな脳領域や皮質下構造を確認できます。尾状核、被殻、淡蒼球、視床、海馬、扁桃体など、脳表からは見えない構造を周囲との位置関係を保ちながら観察できる点が特徴です。神経解剖学を学ぶ学生が、大脳基底核や辺縁系などの立体配置を理解する教材としても利用しやすいでしょう。(Neurotorium)
→ Neurotorium 3D Brain Atlasを開く
Brain Tutor 3D
より詳細な医学教育向けツールとしては、Brain Tutor 3Dがあります。
3DモデルとMRI画像を対応させながら脳構造を観察できることが大きな特徴です。脳回・脳溝、皮質領域、皮質下構造などを立体的に確認できるため、肉眼解剖で学ぶ神経解剖学と臨床画像を結びつける教材として有用です。Web版のほか、各種端末向けのアプリも提供されています。(BrainVoyager)
siibra explorer / EBRAINS
研究レベルの脳アトラスとして特に興味深いのが、EBRAINSが提供するsiibra explorerです。
これは単なるCGの脳モデルではなく、複数の研究用脳アトラスを統合したプラットフォームです。3D表示に加えて、冠状断・矢状断・水平断の3方向を同時に表示でき、脳領域の位置をさまざまな方向から確認できます。BigBrainやJülich-Brainなどのデータも利用でき、肉眼的な神経解剖から細胞構築学的な脳領域区分まで連続的に探索できます。(EBRAINS)
教育用途だけでなく、「この皮質領域は深部構造とどのような位置関係にあるのか」「特定の座標はどの脳領域に相当するのか」といった研究上の確認にも適しています。
BrainFacts 3D Brain
神経解剖学を初めて学ぶ場合には、Society for Neuroscienceが運営するBrainFactsの3D Brainも便利です。
マウスや指による操作で脳を回転させながら、主要な脳領域を確認できます。高度な研究用アトラスほど複雑ではないため、神経解剖学の導入教材として使いやすいことが特徴です。各構造について簡潔な説明も付けられており、3Dモデルを見ながら機能との対応を学ぶことができます。(BrainFacts)
Complete Anatomy
脳だけではなく、頭頸部や全身との関係を含めて解剖学を観察したい場合には、ElsevierのComplete Anatomyがあります。
全身の高精細3D解剖モデルを備え、必要な構造を表示・非表示にしながら解剖学的関係を確認できます。脳そのものだけでなく、頭蓋骨、髄膜、血管、脳神経などとの位置関係を理解するのに適しています。神経解剖学単独のアトラスというより、系統解剖学や臨床解剖学を含めて学ぶための総合的な3D解剖プラットフォームです。(コンプリートアナトミー)
Human Organ Atlas
少し性格の異なる非常に興味深いサービスが、Human Organ Atlasです。
これは模式的なCGモデルではなく、実際のヒト臓器をHierarchical Phase-Contrast Tomography(HiP-CT)で撮像した三次元画像データを公開するプロジェクトです。脳を含む臓器全体を観察した後、関心領域をさらに高解像度で探索できます。全臓器レベルと微細構造レベルを橋渡しする点が大きな特徴です。(ヒューマンオルガンアトラス)
一般的な解剖学アトラスとは異なり、実際のヒト組織を三次元的に観察できるため、解剖学教育だけでなく、組織学、画像解析、形態学研究にも利用価値があります。
Brain/MINDS 3D Marmoset Brain Atlas
ヒトだけでなく霊長類脳に関心がある場合には、理化学研究所を中心とするBrain/MINDSの3D Atlas Viewerも興味深いリソースです。
こちらはコモンマーモセット脳の3Dリファレンスアトラスです。脳の三次元構造を観察できるだけでなく、研究用のアトラスデータとしても整備されています。ヒトと実験動物の脳構造を比較したり、霊長類を用いる神経科学研究で脳領域を確認したりする際に有用です。(Brain/MINDS Data Portal)
→ Brain/MINDS 3D Atlas Viewerを開く
二次元の図から、三次元の理解へ
これまで脳の解剖学では、教科書の模式図、解剖標本、連続切片、CTやMRIなど、異なる二次元情報を頭の中で組み合わせて三次元構造を理解する必要がありました。3D脳アトラスは、その作業をコンピューター上で視覚化してくれます。
とりわけ、Neurotorium 3D Brain Atlasは気軽な神経解剖学学習に、Brain Tutor 3Dは解剖学とMRI画像を結びつけた教育に、siibra explorerは研究レベルの詳細な脳アトラス探索に適しています。また、Human Organ Atlasでは模式図ではなく実際のヒト脳を観察でき、Brain/MINDS 3D Atlasでは霊長類脳へと対象を広げることができます。
脳は本来、三次元の臓器です。脳溝の奥に隠れた皮質、深部に位置する神経核、脳室や白質との位置関係などを「立体として見る」ことで、神経解剖学は格段に理解しやすくなります。
紙のアトラスを眺めるだけでは捉えにくかった脳の奥行きを、自分の手で回転させ、切断し、覗き込むことができるようになりました。3D脳アトラスは、神経解剖学を「覚える学問」から「空間として理解する学問」へと変えてくれる、新しい学習・研究ツールといえます。

“2026年度医学群医学類「#7神経系 神経解剖学講義・実習」を実施します” への2件のフィードバック