実習の後片付けと準備、地震や台風などで落ち着きませんが、学生たちは研究を頑張ってくれています。医学類M2の6週間の実習が終わりました。才能ある学生に研究室に参加してほしいものです。
Science Immunology, Vol. 11, Issue 120, eadz8466, 10.1126/sciimmunol.adz8466
CXCL16-mediated recruitment of γδ T cells to the brain reduces sociability in mice CXCL16を介したγδ T細胞の脳へのリクルートは、マウスの社会性を低下させる
著者名
Natsumi Takayama, Koyomi Shiraishi, Ako Matsui, Shinya Hatano, Kazuhiko Yamamuro, Kenta Nitahara, Akira Makino, Tatsuya Yokota, Nesta Amagiri, Mahiro Watanabe, Ayame Nagafuchi, Mio Kawazoe, Minami Serino, Yoshihiro Harada, Tomoaki Takao, Kakeru Takenobu, Yasunobu Yoshikai, Kazufumi Kunimura, Manabu Makinodan, Toru Takumi, Minako Ito
Division of Allergy and Immunology, Medical Institute of Bioregulation, Kyushu University, Fukuoka, Japan 九州大学 生体防御医学研究所 アレルギー・免疫学分野
Abstract
自閉スペクトラム症(ASD)は、コピー数多型(CNV)などの遺伝的要因と、母体感染などの免疫学的要因によって形づくられる神経発達障害である。しかし、遺伝性ASDの発症に関する研究の多くは神経学的側面に焦点を当てており、遺伝性ASDにおける免疫の役割は不明なままである。本研究では、ASDに関連する一般的なCNVをモデル化した 15q11-13重複(15q dup)マウス の脳において、γδ T細胞 が増加していることを示す。15q dupマウスの脳で上昇した CXCL16 は、γδ T細胞の浸潤を促進し、特に IL-17Aを産生する Vγ6⁺ γδ T細胞 の浸潤を促した。発生過程を通じて Vγ6⁺ γδ T細胞 を欠失させる、または Vγ6 もしくは IL-17A に対する中和抗体で処置すると、15q dupマウスの社会的行動が増加した。これらの知見は、免疫調節異常が15q dupマウスにおける社会的行動の障害に寄与することを示唆しており、母体免疫活性化モデルでの観察結果とも一致する。また、ASDに関連する社会的行動の違いに対する介入標的となる可能性がある。

結果
本研究では、ASD関連コピー数多型である 15q11-13重複(15q dup)マウス の脳内免疫細胞を解析し、発達期の脳で γδ T細胞 が増加していることを見出した。まず、2週齢、3週齢、4週齢の大脳由来 CD45⁺細胞 に対して単一細胞RNAシーケンスを行ったところ、15q dupマウスではWTマウスに比べて T細胞、NK細胞、NKT細胞 の割合が高く、さらにCD45高発現ミクログリアの増加とpre-B細胞の減少も観察された。T細胞、NK細胞、NKT細胞に焦点を当て、胎生16日から6週齢まで解析した結果、Trdc を発現するγδ T細胞が15q dupマウスで多く、フローサイトメトリーでも2週齢以降の脳内γδ T細胞数の増加が確認された。この増加は10週齢成体でも維持されていた。一方、CD4⁺T細胞やCD8⁺T細胞数には発達期で明確な差はみられなかった。
次に、γδ T細胞増加の機序を検討した。γδ T細胞中の Mki67⁺ または Ki67⁺ 細胞割合はWTと15q dupで差がなく、脳内での増殖よりも浸潤が主因と考えられた。ケモカイン受容体解析では、γδ T細胞クラスターで Cxcr6 が高発現していた。15q dupマウスでは CXCR6⁺ γδ T細胞数 が増加していたが、γδ T細胞中のCXCR6陽性割合やCXCR6発現量自体には差がなかった。さらに、3週齢15q dupマウスの脳ライセートでは CXCL16産生がWTの約2倍 に上昇し、Cxcl16 mRNA は海馬と脳幹で高かった。単一細胞RNAシーケンスとRNAscopeから、CXCL16の主な産生細胞はミクログリアであることが示された。2週齢から抗CXCL16抗体を投与すると、5週齢でみられる15q dupマウスの脳内γδ T細胞増加は消失したため、CXCL16–CXCR6軸 がγδ T細胞の脳内浸潤を促すと考えられた。
さらに、増加したγδ T細胞の性質を調べるため、脳、硬膜、胸腺、血液、脾臓、肺、結腸の Vγ6⁺ γδ T細胞 を比較した。脳内γδ T細胞は結腸、肺、硬膜とは異なり、胸腺や血液に近い表現型を示し、胸腺から血液を介して脳へ移行する可能性が示唆された。脳で多いクラスター5は Mki67 などの増殖関連遺伝子を高発現しており、TCR解析では各組織のVγ6⁺ γδ T細胞に共通したTCR配列が認められた。さらに、Vγ6Vδ1 TCRを発現させたTG40細胞を用いた実験では、神経伝達物質関連分子のうち hydroxyindoleacetic acid がTCR刺激後のIL-2産生を有意に誘導し、脳内抗原環境がVγ6⁺ γδ T細胞の増殖能に関与する可能性が示された。
最後に、病態への寄与が検証された。15q dupマウスの脳では IL-17A⁺ γδ T細胞数 が増加し、IL-17Aを発現する細胞は主に Tcrg-V6⁺ γδ T細胞 であった。IL-17A–GFPや免疫染色により、Vγ6⁺ γδ T細胞は海馬に局在し、15q dupマウスで増加していた。また、IL-17受容体構成分子 Il17ra は海馬および周辺皮質のグルタミン酸作動性ニューロンとGABA作動性ニューロンに発現していた。胎生16日から3週齢まで抗IL-17A抗体を投与すると、8週齢の社会認識試験で15q dupマウスの新奇マウスへの接触時間が増加した。さらに、Vγ4/6欠損15q dupマウスや、1〜3週齢に抗TCR-Vγ6抗体を投与した15q dupマウスでも社会行動が改善し、抗TCR-Vγ6抗体では不安様行動も軽減した。以上から、15q dupマウスではミクログリア由来CXCL16により IL-17A産生性Vγ6⁺ γδ T細胞 が脳へ浸潤し、社会性低下や不安様行動に寄与することが示された。
議論
本研究の議論では、15q11-13重複(15q dup)マウス における社会性低下や不安様行動に、IL-17Aを産生するVγ6⁺ γδ T細胞 が関与することが中心的に論じられている。ASDは遺伝的要因と環境要因が複合して生じる多因子性疾患であり、これまで母体免疫活性化モデルでは IL-17A が神経発達異常に関与することが報告されてきた。本研究は、遺伝性ASDモデルである15q dupマウスでも、脳内に増加したVγ6⁺ γδ T細胞がIL-17Aを産生し、発達期の過剰なIL-17A曝露がASD様行動を引き起こす可能性を示した点で重要である。実際、発達期に抗IL-17A抗体または抗TCR-Vγ6抗体で処理すると、15q dupマウスの社会行動異常が軽減されたことから、IL-17A–Vγ6⁺ γδ T細胞経路が行動異常の形成に寄与すると考えられる。
また、本研究では、15q dupマウスの脳にγδ T細胞が蓄積する機序として、CXCL16–CXCR6軸 が提案されている。単一細胞RNAシーケンスおよびRNAscope解析から、脳内の Cxcl16 の主要な産生細胞はミクログリアであることが示され、Cxcl16⁺ミクログリアでは活性化、増殖・細胞周期、サイトカイン・免疫応答に関する遺伝子プログラムが高発現していた。さらに、炎症性サイトカインであるIFN-γやTNF-αによってCXCL16発現が誘導され得ることから、15q dupマウスでは発達期の神経炎症がCXCL16産生性ミクログリアニッチを形成し、それがγδ T細胞の脳内リクルートを促す可能性がある。ただし、CXCL16誘導の上流シグナルや、CXCL16/CXCR6依存的リクルート、ミクログリア活性化、IL-17Aシグナルの因果関係は、今後さらに検証する必要がある。
γδ T細胞の由来についても議論されている。過去の研究では、皮膚や肝臓のγδ T細胞は組織常在性が高い一方、肺、結腸、脾臓のγδ T細胞は血液を介して循環することが示されている。本研究では、脳内Vγ6⁺ γδ T細胞が結腸、肺、硬膜の細胞とは異なり、胸腺のVγ6⁺ γδ T細胞に近い表現型を示したため、胸腺から血液を介して脳へ移行する可能性が示唆された。ただし、胸腺から脳への直接的な移動を証明するには、光変換蛍光タンパク質発現マウスなどを用いた細胞動態解析が必要である。また、IL-17Aがニューロン上のIL-17受容体を介して直接作用するのか、あるいはグリア細胞を介して間接的に作用するのかは未解明であり、細胞種特異的な遺伝学的解析が今後求められる。
さらに、行動表現型ごとに異なる神経免疫機序が関与する可能性も示された。発達期のCXCL16中和は15q dupマウスの社会認識障害を選択的に改善したが、不安様行動には影響しなかった。一方、Vγ6⁺ γδ T細胞を直接標的とすると、社会行動異常と不安様行動の両方が改善された。このことは、CXCL16依存的な脳周辺への免疫細胞リクルートが主に社会行動異常に関与する一方、不安関連表現型にはより広範なIL-17A産生γδ T細胞の抑制が必要である可能性を示している。著者らは、免疫細胞の局在やIL-17Aシグナルの強度が、異なる行動アウトカムを形づくる重要な要因であると考察している。
最後に、本研究は母体免疫活性化モデルと遺伝性ASDモデルのあいだに、IL-17Aを介する共通の病態メカニズム が存在する可能性を提示している。IL-17A産生細胞の種類はモデルによって異なるものの、IL-17Aがニューロンに作用して社会行動を低下させるという点は共通している可能性がある。また、別の遺伝性ASD様モデルである Shank3−/+ マウス でも脳内γδ T細胞の増加がみられたことから、異なる原因をもつASD様病態に共通する神経免疫経路が存在する可能性がある。特に15q dupマウスでは、シナプス表現型が観察される3週齢以前の発達期にVγ6⁺ γδ T細胞やIL-17Aを制御することで、成体期の社会行動や神経機能に長期的効果をもたらす可能性が示唆されている。






