新年あけましておめでとうございます。旧年中は、解剖学・神経科学研究室の教育・研究活動に格別のご理解とご支援を賜り、心より御礼申し上げます。2026年の新春にあたり、2025年の歩みを振り返りつつ、今後の展望を申し述べます。
2025年は、研究室として「研究成果の可視化」と「次世代研究者の育成」を両輪に、基礎神経科学・神経免疫・精神疾患モデル研究を中心としたプロジェクトを着実に前進させた一年でした。日々のラボセミナーや輪読を通じて、データの読み解き方、仮説の立て方、そして「説明できる成果」へ落とし込むプロセスを繰り返し磨き上げました。特に、学類生・医学類生・大学院生が同じ場で議論し、互いの視点を持ち寄る文化が定着したことは、研究室の大きな財産です。
10月1日から3日にかけてつくば国際会議場で開催された本国際会議では、「医学・生命科学国際学生発表会」に研究室から2名の学生が参加し、口頭発表・ポスター発表を通じて国際的な議論を経験しました。最終日には優れた研究に対してプレゼンテーションアワードが授与される構成で、医療科学類3年のIさんがExcellent Poster Awardを受賞しました。テーマは「炎症性サイトカイン受容体IL-17RAの神経解剖学的局在と自閉スペクトラム症への示唆」であり、卒業演習の発表用スライドを起点に、データの見せ方を再設計し、ポスターへと昇華させた成果です。発表直前には研究室内でリハーサルを重ね、質疑応答の想定問答まで準備したうえで本番に臨みました。Iさんの受賞は、個人の努力はもちろん、共同研究者・指導教員・日常的な活動が結実したものと受け止めています。






また、2025年11月13日~15日に国立京都国際会館で開催されたBPCNPNP2025合同年会(日本生物学的精神医学会/日本臨床精神神経薬理学会/日本神経精神薬理学会)では、研究室の医学類メンバーが複数題の演題を発表しました。その中で、Tさんが「KIF1Bα変異による若年発症Charcot-Marie-Tooth病モデルの解析」に関する発表で若手優秀発表賞を受賞し、研究内容の独創性とプレゼンテーションの完成度が高く評価されました。精神疾患関連キネシン研究の文脈に、末梢神経疾患モデルの知見を橋渡しする姿勢は、研究室が目指す「疾患横断的理解」の方向性とも合致しており、今後の発展が大いに期待されます。



年間を通じて国内外主要学会での発表を継続しました。3月のAPPW2025(Anatomy-Physiology-Pharmacology Week)では、IL-17受容体発現の時空間マッピング、IL-17Aによる中枢神経系の神経免疫制御異常、ASDリスク因子Myosin Idの局在制御、霊長類大脳皮質でのSLIT2発現解析など、研究室の複数ラインが「神経回路形成と免疫」という共通軸で連関することを示す演題を発表しました。7月の第48回日本神経科学大会(Neuro2025)では、精神疾患関連キネシンとミクログリア形態、KIF1Bα変異モデル、ASDモデルにおける大脳皮質IL17RA mRNA発現動態など、データに基づく議論を深める機会となりました。さらに12月の第48回日本分子生物学会年会では、IL-17A受容体の細胞内・脳内局在やASDとの関連に関する発表など、研究室の射程が広がりつつあることを実感しました。
学生の成長を語るうえで、学会発表だけでなく、学内での段階的なアウトプットの積み重ねも重要です。2月には生命環境学群生物学類の卒業研究発表会で生物学類学生が卒業研究の成果を発表し、研究計画から実験・解析・考察までを自律的にまとめ上げました。7月の修士論文研究計画発表会では、次年度に向けた研究のロードマップを提示し、研究の仮説設定と実験デザインをより高いレベルへ引き上げました。9月には医療科学類の卒業研究中間発表会において、Hさん、YさんがそれぞれKIF17と精神疾患関連行動、KIF17変異モデルにおけるサイトカイン投与後の脳内変化について観察について発表し、限られた期間で「伝わる研究」に仕立てる訓練を積みました。ARE(先導的研究者体験プログラム)の報告会でも学類生が研究成果をまとめ、学類早期の段階から研究の基礎体力を養う機会となりました。



研究成果の発信という観点では、学生が執筆に関わった論文・総説・プレプリントの公開も進みました。12月には、Treg–Th17バランスとASD病態に関する総説が掲載され、免疫学的概念を神経発達の文脈で整理し直す試みが形になりました。さらに、母体免疫活性化と胎児生存・脳発達におけるIL-17Aとミクログリアの役割をまとめた英文総説がNeuroglia誌に掲載され、基礎研究から臨床的示唆までを俯瞰する力を養う機会にもなりました。
「Gene expression of psychiatric disorder-related kinesin superfamily proteins (Kifs) is potentiated in alternatively activated primary cultured microglia」は、BMC Research Notes(18巻44号)に掲載されました。本研究では、精神疾患関連分子として注目されるキネシンスーパーファミリー遺伝子群(Kifs)が、代替活性化ミクログリアにおいて発現増強されることを明らかにし、免疫環境の変化と細胞内輸送機構との関連を分子レベルで示しました。さらに 「High-speed three-dimensional cross-sectional measurement of cultured neurons by scatterometry that improves resolution by an order of magnitude」は、Optics Express(Vol.33, Issue 5, 2025)に掲載されました。本研究は、散乱計測を用いた培養神経細胞の三次元断層計測技術を確立し、従来法を大きく上回る分解能を実現したもので、神経形態解析と光学技術を融合した学際的研究成果です。
また、総説 「免疫-脳連関から見た自閉スペクトラム症の病態理解 ― IL-17Aによるミクログリア機能修飾の観点から ―」は、『精神医学』(67巻3号)に掲載されました。母体免疫活性化や炎症性サイトカインIL-17Aがミクログリア機能に及ぼす影響を整理し、基礎研究と臨床精神医学を橋渡しする内容となっています。このように研究室全体として「研究成果の出版」の強化に取り組んでいます。
2026年は、これらの成果を次のステップへ進める年と位置づけています。具体的には、(1)神経免疫シグナルの発現動態と細胞内局在を結び付けたメカニズム解明、(2)精神疾患関連キネシン研究の疾患横断的展開、(3)学生が主体となって研究計画を提案し、国際発表や論文化へ接続する仕組みの整備、を重点目標として推進します。研究は長距離走ですが、日々の小さな改善と、適切なフィードバックの積み重ねが最終的な到達点を決めます。引き続き、皆様からのご指導・ご助言を賜りながら、研究室一丸となって挑戦を続けて参ります。
末筆ながら、皆様のご健勝とご多幸、そして2026年が実り多い一年となりますことを心より祈念申し上げます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
2026年 元旦 解剖学・神経科学研究室スタッフ一同

