Journal Club (December 16, 2023)

Congenit Anom (Kyoto). 2019 May;59(3):81-87. doi: 10.1111/cga.12323.

Molecular mechanisms underlying the models of neurodevelopmental disorders in maternal immune activation relevant to the placenta (胎盤に関連する母体免疫活性化における神経発達障害モデルの基礎となる分子メカニズム)

Tsuyoshi Tsukada 1 2Hiroki Shimada 1 3Hiromi Sakata-Haga 1Hideaki Iizuka 2Toshihisa Hatta 1

Abstract

The rapid rise in the prevalence of autism spectrum disorders (ASD) and other psychiatric disorders displaying similar traits has increased the need to elucidate their molecular mechanisms. Epidemiological studies have shown that maternal infection during mid-pregnancy is associated with increased risk of neurodevelopmental disorders such as ASD in offspring. Using maternal infection models, researchers have gathered evidence relevant to such disorders. A comprehensive summary of the changes in the brain structure, function, and behavior in offspring induced by maternal immune activation (MIA) has been reported. However, the molecular mechanisms underlying the association between MIA and improper brain development, which ultimately lead to neurodevelopmental disorders, have not been fully reviewed. This paper summarizes the currently known molecular mechanisms associated with the MIA model, with a special focus on the role of the placenta in fetal brain development.

自閉症スペクトラム障害(ASD)や類似の特徴を示す他の精神疾患の有病率が急速に上昇していることから、その分子メカニズムを解明する必要性が高まっている。疫学的研究により、妊娠中期における母体感染が、ASDのような神経発達障害の子孫におけるリスク上昇に関連することが示されている。母体感染モデルを用いて、研究者たちはこのような障害に関連する証拠を集めてきた。母体免疫活性化(MIA)によって誘発される子孫の脳の構造、機能、行動の変化に関する包括的な要約が報告されている。しかし、MIAと不適切な脳の発達との関連、ひいては神経発達障害につながる分子メカニズムについては、十分に検討されていない。本稿では、胎児の脳発達における胎盤の役割に特に焦点を当てながら、MIAモデルに関連する現在知られている分子メカニズムを要約する。

本論文では、母親の免疫活性化(MIA)が胎児の脳発達に及ぼす影響を、特に胎盤を介したメカニズムを通じて調査している。IL-6ファミリーのシグナル伝達が中心的な役割を果たすと考えられており、この観点からの分析が行われている。

Keywords: fetal brain development; interleukin-6 (IL-6) family signaling pathway; maternal immune activation (MIA); neurodevelopmental disorders; placenta.


複数の動物モデルを用いて、MIAが胎児の脳に及ぼす影響を研究しています。IL-6ファミリーおよびTNF-αシグナル伝達経路に注目し、これらが胎児の脳発達にどのように作用するかを詳細に分析している。

①IL-6の役割: MIAが引き起こす胎児の脳への影響において、IL-6が重要な役割を果たしていることが明らかになった。IL-6は、胎盤を介して胎児の脳に伝わり、そこで神経発達に影響を与えることが示されている。

②胎盤の機能: 胎盤は、母親の体と胎児の間の重要なインターフェースとして機能する。この研究では、MIAによって変化する胎盤の機能が、胎児の脳発達にどのように影響を与えるかが調べられた。

③その他のシグナル伝達経路: IL-6以外にも、TNF-αなどの他のシグナル伝達経路が胎児の脳発達に影響を与える可能性が示唆されている。

図4. MIAによって誘発される神経発達障害の、IL-6ファミリーのシグナル伝達に基づくメカニズムの提案。母体血清中のIL-6レベルの上昇は、胎盤における重要な胎児脳発達成長因子GH、IGF-1、IGFBP3の発現を抑制する。母体血清中に誘導されたIL-6は胎盤を通過することができ、それによって胎児の脳の発達に影響を及ぼす可能性がある。母体由来のIL-6はTh17細胞の分化を促進し、IL-17の産生につながり、その結果、胎児の脳の無秩序な積層とASDの表現型をもたらす。皮質形成に関連する生理的LIF媒介シグナルリレー経路は、主にSOCS3によって抑制されるが、MIAの場合は母体血清中のIL-6の上昇によって誘導される。破線はその基礎にある可能性のあるメカニズムを示している。GH、成長ホルモン;IGF-1、インスリン様成長因子I;IGFBP3、インスリン様成長因子結合タンパク質3

〇Discussion

①IL-6シグナル伝達経路の重要性: IL-6シグナル伝達経路が、MIAモデルにおける神経発達障害の発症メカニズムにおいて中心的な役割を果たす可能性が強調されている。この発見は、神経発達障害の治療法開発において重要な情報を提供する可能性がある。

胎盤の役割の再評価: 従来、胎盤は単なる栄養素や酸素の供給源と考えられがちでしたが、この研究は胎盤が胎児の脳発達においてよりアクティブな役割を果たしていることを示している。

将来の研究方向性: この研究の結果は、神経発達障害の原因と治療に関するさらなる研究の方向性を示唆している。特に、胎盤を介した影響や、他の分子シグナル伝達経路の影響に関する研究が必要であるとされている。この研究は動物モデルに基づいており、人間における効果を直接確認することはできません。したがって、人間に対する直接的な影響については、さらなる研究が必要である。

可能な応用:この研究は、自閉症スペクトラム障害(ASD)を含む神経発達障害の原因となる分子メカニズムの理解を深め、将来的に新しい治療法の開発に貢献する可能性がある。

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