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Pediatric Research (2023) Basic Science Article Published: 27 September 2023

Interleukin-17A stimulation induces alterations in Microglial microRNA expression profiles (インターロイキン-17A刺激はミクログリアのマイクロRNA発現プロファイルに変化をもたらす)

Yukako IitaniRika MikiKenji ImaiKazuya FumaTakafumi UshidaSho TanoKosuke YoshidaAkira YokoiHiroaki Kajiyama & Tomomi Kotani

〇背景
母体のインターロイキン(IL)-17Aの増加と活性化ミクログリアは、母体免疫活性化(MIA)の病理学的表現型に寄与する極めて重要な因子であり、仔に神経発達障害を発症させる。本研究では、IL-17AがミクログリアのマイクロRNA(miRNA)プロファイルに影響を及ぼすかどうかを明らかにすることを目的とした。

〇インパクト
・母体免疫活性化(MIA)の病態におけるインターロイキン(IL)-17Aとミクログリアに関する証拠が増えているにもかかわらず、ミクログリアにおけるIL-17Aの下流は完全にはわかっていない。

・IL-17AはマイクロRNAプロファイルを変化させ、ミクログリアにおけるmmu-miR-206-3pの発現を上昇させた。mmu-miR-206-3pは自閉症スペクトラム障害(ASD)関連遺伝子であるHdac4とIgf1の発現を低下させた。

・Hdac4の発現はMIA児の脳でも減少した。

・hsa-miR-206の配列はmmu-miR-206-3pの配列と一致した。

・この研究は、IL-17Aに関連した障害を持つ母親から生まれたASD児の予測や介入につながる病理学的メカニズムの手がかりとなるかもしれない。

図1:ミクログリアに対するIL-17A投与の効果。
a E17におけるLPS誘発MIAモデルマウスとコントロールマウスのIL-17Aレベル。データは平均値±SEMで示した(各群n = 4)。*b ミクログリアにおけるIL-17受容体mRNAの発現。実験は、独立したマウスから採取した初代培養ミクログリア(n = 4)を用いて行った。 c 炎症性サイトカインとミクログリアにおけるNos2 mRNA発現に対するIL-17Aの効果。ミクログリアは10ng/mLのIL-17Aで24時間刺激された。データはスチューデントのt検定を用いて解析した。p < 0.05.

〇概要
この研究は、マウスのミクログリアにおいてインターロイキン-17A(IL-17A)がマイクロRNA(miRNA)のプロファイルに与える影響に焦点を当てたものである。IL-17Aは、母体免疫活性化(MIA)関連の神経発達障害の発症において重要な役割を担っている。研究では、IL-17Aによって特定のmiRNA、特にmmu-miR-206-3pの発現が増加することが観察された。このmiRNAは、Hdac4とIgf1という遺伝子の発現を抑制することが明らかにされ、MIA関連の神経発達障害に対する新しい予防介入戦略としての可能性が示唆されている。

〇背景
MIAは、妊娠中の母体の免疫系の活性化によって引き起こされるものであり、この状態が子供の神経発達障害、特に自閉スペクトラム症(ASD)と関連していることが示唆されている。IL-17Aは、このプロセスにおいて重要な役割を果たすものであり、特にマイクログリアの活性化に関与している。マイクログリアは脳内の免疫細胞であり、神経発達やシナプス形成にも重要な役割を果たすものである。

〇方法
マウスのミクログリアを培養し、IL-17Aで刺激した後、miRNAシーケンシングと定量的リアルタイムPCR(qRT-PCR)を用いて、miRNAのプロファイルを分析した。さらに、mmu-miR-206-3pのmimic(模倣分子)をミクログリアに導入し、特定の遺伝子の発現への影響を調査した。

〇結果
miRNAプロファイルの変化:IL-17Aの投与により、複数のmiRNAが調節されたが、特にmmu-miR-206-3pの発現が顕著に増加したことが観察された。この発現の増加は、IL-17Aの生物学的作用の一環として解釈される。

特定miRNAの機能:mmu-miR-206-3pの機能に関して、このmiRNAが特定の遺伝子の発現に影響を与えることが示された。特に、Hdac4とIgf1という遺伝子の発現が、このmiRNAによって抑制された。

遺伝子発現の制御:遺伝子Hdac4とIgf1は、神経発達やシナプス形成において重要な役割を果たす。これらの遺伝子がmiRNAによって制御されることは、神経発達障害におけるmiRNAの役割の理解を深める。

miRNAとマイクログリアの活性化:IL-17Aによるマイクログリアの活性化がmiRNAプロファイルに影響を与えることが示され、特にmmu-miR-206-3pがマイクログリアの機能や状態において重要な役割を果たすことが示唆された。

〇Discussion
miRNAの重要性:mmu-miR-206-3pの発現の増加が、IL-17Aによって引き起こされるマイクログリアの活性化と関連していることが強調された。これは、神経発達障害の発症におけるmiRNAの役割を理解する上で重要な発見である。

神経発達障害とIL-17A:IL-17Aが神経発達障害、特に自閉症スペクトラム障害(ASD)の発症にどのように関与するかについての理解を深めることができる。特に、マイクログリアの活性化とmiRNAの調節が重要な要素として考慮される。

治療戦略の可能性:mmu-miR-206-3pや他のmiRNAを標的とすることによって、神経発達障害の予防や治療の新たな戦略が開発される可能性がある。これは、特に母体の免疫系が活性化された状態で生じる障害の理解と治療に貢献する。

マイクログリアと神経発達:マイクログリアが神経発達においてどのように機能するか、そしてIL-17Aがこれらの細胞にどのように影響を及ぼすかについての議論が行われた。特に、マイクログリアの活性化状態が神経発達障害の発症にどのように関与するかが重要である。

ヒトとマウスのmiRNAの比較:mmu-miR-206-3pがヒトのmiRNAと一致する可能性についての考察が行われ、この発見がヒトにおける神経発達障害の研究にどのように応用できるかについて議論された。

さらなる研究の必要性:mmu-miR-206-3pの具体的な機能や、IL-17Aがマイクログリアに与える影響の詳細について、さらなる研究が必要であることが強調された。これにより、MIA関連の神経発達障害のより深い理解と効果的な治療法の開発が期待される。

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