Lab Seminar (August 2, 2021)

Neuro2021, BNBP2021などの学会報告会を行いました。VirBELAを使用したオンラインポスターは新鮮でした。

当研究室から、岩田助教がオンサイトで下記の発表を行いました。

Suguru IwataMomo MorikawaYosuke Takei, Nobutaka Hirokawa. An activity-dependent local transport regulation via degradation and synthesis of KIF-17 underlying cognitive flexibility. The 44th Annual Meeting of the Japan Neuroscience Society. 2021.07.28-31. Kobe.

[2S03m-05]ミクログリアと中枢神経系境界部に仔在するマクロファージの相違点
小西博之、木山博資(名古屋大学大学院医学系研究科)
ミクログリアはCNS parenchyma(実質)に存在するが、脳実質以外にはマクロファージが存在する (non-parenchymal CNS-associated macrophages; CAMs)。それらは棒状でほとんど突起がなく血管にへばりついていて、髄膜、血管周囲腔及び脈絡叢に存在する。この CAMsの役割についての研究を行った。まずマーカー探しから始めて、ミクログリア特異的なマーカーとして Siglec-H (sialicacid-binding immunoglobulin-like lectin I-I)を見つけた。これは IbaIなどよりも特異的であり、ミクログリアとその他のマクロファージと区別をつけることができる。同時にモデルマウスとしてミクログリアの機能不全を起こす Siglec dtrマウスを作製した。結果として Siglec dltrマウスにおいて、 ミクログリアの機能を CAMsが代什するということはなく、主にアストロサイトがその役割を担う。

[2S03m-06]神経変性型タンパク凝集体への脳境界部マクロファージの関与
樋口真人、 田桑弘之、 高橋真奈美 (量子科学技術研究開発機構)
老人斑などに見られる正常に折りたたまれないタンパク質凝集体のクリアランスについて、二光子顕微鏡を使った研究を展開している。クリアランスはミクログリアや脳表面に存在する境界関連マクロファージ(CAMs)などによって媒介される。二光子レーザー顕微鏡による脳表面の細かい観察と観察結果から得られる 3D構成によって調べたとろ、タウと a-シヌクレインの原線維は最初アストロサイトに取り込まれ、それからアストロサイト突起から動脈周囲の空間に放出される。その後、凝集体は脳表面に移動し、この輸送は CAMsによって媒介されると思われる。脳表面マクロファージはこれらの沈着物を食べ、静脈に排泄する?変性タンパク凝集のモデルマウスでは、棒状ミクログリアがタウ封入体を含むニューロンを飲み込み、貪食されたニューロン成分を脳表面に輸送して CAMsが静脈に排出する。

[3LS06-2]カールツァイス株式会社ランチョンセミナー
高速超解像から大規模3Dまで、バイオイメージングを広くカバーする最祈顕微鋭技術群
今古格(京都大学大学院生命科学研究科)
全自動全脳撮影システムの紹介を行っていた。アガロースゲルに脳を哩め込み、水槽の中に固定してゲル立方体の上面から撮影と薄切を繰り返すシステム。薄切の厚さは50 μm?―回の撮影でデータサイズが 0.5TB程度になるので改善を目指している。強みは解析速度である。撮影には 1-3日ぐらいかかるが、脳データの再構成には imarisを使って 10分程度で解析できる。撮影さえ終わればすぐに結果が出る。補正の必要がない。ただし、 cellの色分けができる程度で改善の余地がある。研究内容データとしては Arcを使った神経活動の研究をめざしている。

〇[2012a-1-02]小脳プルキンエ細胞の樹状突起 self-avoidanceにおける RPTPμ の役割
竹尾ゆかり、 HerovenChristina、野澤和弥、 三浦会里子、 AricescuRadu、柚崎 通介(慶応義塾医学部生理学)
プルキンエ細胞を研究ターゲットとし、その発生における dendriticself-avoidance(突起同士が脳内で交差しないように突起を伸ばすシステム)についての研究を行った。様々な追伝子がこれに関わっていることが分かっていて、候補辿伝子の逆遺伝学を徹底的に行う研究。これまでに Pcdh-a,Pcdh-‘Y,Slit2/Robo2が dendriticself-avoidanceに重要 だということが分かっている。こ れまで細胞接着因子に着目した研究が多いが今回はRPTP~t(receptor-type tyrosine-protein phosphatases)を miRNA-mediatedknockdown by in ulero electroporationでプルキンエ細胞を調べたところやはり樹状突起交差が増えていた。他の候補遺伝子とダブルノックアウトしたとき の様子を示して、どれも単独のとき以上に樹状突起交差が増えていることを示す。

〇BPNP2021シンポジウム6

発達障害研究最前線:細胞から臨床まで 時間: 16:40-18:40 会場: 第1会場(アネックス1)

座長: 大隅 典子(東北大学大学院医学系研究科)内匠 透(神戸大学大学院医学研究科)

演者: 大隅 典子(東北大学大学院医学系研究科)野村 淳(神戸大学大学院医学研究科)山室 和彦(奈良県立医科大学)古田島(村上) 浩子(東京都医学総合研究所)山末 英典(浜松医科大学)

〇基礎-臨床連携シンポジウム 日本精神神経学会連携企画 

2S10a 当事者・ご家族の想いを適える精神医学研究 時間: 16:40-18:40 会場: 第10会場(3A)

オーガナイザー: 尾崎 紀夫(名古屋大学 大学院医学系研究科)

司会: 橋本 亮太(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)和氣 弘明(名古屋大学大学院 医学研究科)

演者: 夏苅 郁子(やきつべの径診療所)尾崎 紀夫(名古屋大学 大学院医学系研究科)大隅 典子(東北大学大学院医学系研究科)林(高木)朗子(理化学研究所 脳神経科学研究センター)

〇Time- and area-dependent macrophage/microglial responses after focal infarction of the macaque internal capsule (マカクサル内包局所梗塞後の時期および領域特異的マクロファージ/ミクログリア応答)
Junpei Katoa, Yumi Murata, Ichiro Takashima, Noriyuki Higo
a, Human Informatics and Interaction Research Institute, National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST), Tsukuba, Ibaraki, Japan
b, Graduate School of Comprehensive Human Sciences, University of Tsukuba, Tsukuba, Ibaraki, Japan
Received 12 August 2020, Revised 9 November 2020, Accepted 3 December 2020, Available online 14 December 2020.

これまでの研究により、脳卒中後のマクロファージ/ミクログリアの炎症応答は, 運動機能回復を阻害する因子となることが示唆されている。これらの研究には主にげっ歯類モデルが用いられてきたが、本研究ではマカクザルを用いて, 梗塞モデルを作成し、運動神経線維束が集まる内包後脚部の局所梗塞後のマクロファージ/ミクログリア増加の経時的変化を定量的に解析した。梗塞周囲においてIba1は梗塞後 0 日から 2〜3 週間に徐々に増加し, 少なくとも 6 ヶ月まで持続した。本モデルを用いた先行研究では、一次運動野第V 層において大型錐体細胞の逆行性萎縮または変性が認められている。本研究では、この領域における Iba1 陽性細胞が梗塞後数週間の間に一過性の増加を示すことを発見した。次に梗塞周囲およびM1第V 層においてCD68(組織貪食型), CD86(炎症型), CD206(抗炎症型)およびIL-1β、 IL-10 の発現を調べたところ、慢性期における梗塞周囲と一次運動野の両方でマクロファージ/ミクログリアが抗炎症の役割を担うことが暗示された。一方で炎症応答は急性期の梗塞周囲にのみ認められた。マクロファージ/ミクログリアの増加・減少パターンおよびその役割は霊長類とげっ歯類間で異なる可能性があると考えらえる。

Human Brain Consisting Of Colored Wires Surrounded By Neural Threads. 3D Illustration.

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください