微小管を駆けるKIF5、神経の響き

KIF5(KIF5A/B/C)は微小管上を移動するモータータンパク質(kinesin-1)であり、神経細胞においてシナプス関連分子やmRNAの輸送を担う重要な因子です。統合失調症や自閉スペクトラム症(ASD)との関係については、現時点でKIF5自体が原因遺伝子として強く確立されているわけではありませんが、神経発達やシナプス機能を介した間接的関与が複数の研究から示唆されています。

特にKIF5Bは、PSD95やFMRPなどのシナプス関連分子の樹状突起輸送に関与しており、ノックダウンにより樹状突起スパイン形成異常やシナプス可塑性低下、学習・記憶障害を引き起こすことが報告されています。これらの異常は統合失調症やASDの中核的病態と一致しており、KIF5Bは神経回路形成異常を介して精神疾患に関与する可能性があると考えられます。またKIF5Cについては、変異を有する患者で発達遅延、知的障害、社会行動異常などが報告されており、ASD関連表現型との関連が指摘されています。KIF5Cも樹状突起スパイン形成やシナプス伝達、長期増強(LTP)に関与するため、神経発達障害の候補遺伝子と位置づけられています。

統合失調症やASDでは軸索輸送異常が重要な病態機構とされており、その中心的役割を担うkinesinファミリー全体が注目されています。ただし、遺伝学的にはKIF5単独がGWASで強く同定されているわけではなく、同ファミリー内の他分子(KIF1AやKIF17など)が候補として報告されている段階です。KIF5は精神疾患の直接原因遺伝子というよりも、シナプス輸送や神経回路形成を介した病態メカニズムに関与する分子として理解されています。今後の研究により、その位置づけがさらに明確になると考えられます。

https://www.nature.com/articles/s41419-024-06428-9

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