ほどけゆく時間の結び目

三月上旬になると、季節はまだ冬の名残を抱えながらも、どこかで確実に向きを変えはじめていることを感じます。朝の空気は冷たく、吐く息は白く残りますが、昼の光はやわらかく長くなり、窓辺や廊下の床に落ちる陽だまりは、冬とは少し違う色を帯びています。木々の枝はまだ裸のままですが、その先には目に見えないほど小さな変化が潜んでいます。芽は固く閉じたままでも、内側ではゆっくりと準備が進み、静かな力が満ちてきています。

この時期は、終わりと始まりが重なる不思議な季節でもあります。卒業や異動の知らせが届き、長く続いた時間に区切りがつく一方で、新しい出会いや計画もまた、まだ輪郭の定まらないまま動きはじめています。人はしばしば、はっきりとした変化を「始まり」や「春」と呼びますが、実際にはその前の静かな時間こそが大切なのかもしれません。目立つ出来事はまだ起こっていなくても、物事の流れはすでに変わりはじめているからです。三月上旬とは、そうした見えにくい変化に気づく季節です。冬の静けさの中に、かすかな(そして確かな)動きが混ざりはじめます。遠くで鳴る小さな前触れのように、未来の気配がそっと差し込んできます。まだ春そのものではありませんが、確かに春へ向かっていることだけは、誰の心にも静かに伝わってきます。

本日は、医学類の学生が技術支援員と一緒に実験をしました。来年度入学する学生とも、Webで研究の打ち合わせを行いました。レスポンスが早く、大変助かります。臨床実習を終えた学生は、学会のポスター作成を行いました。「アポロンの馬車」という作品は、雲間を突き進む荒々しい4頭の馬と、それを操るアポロンを描いており、作者であるルドンにとって「苦悩の後に訪れる至福の喜び」や、自身の解放を象徴するテーマでした。年度が替わると、講義と実習の大波に呑まれてしまいますので、花粉に負けずに2025年度内、研究に一意専心したいところです。アポロンのように鋭気と烈気に満ちた若い人たちと、闇を切り拓き、喜びを分かち合いたいものです。

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