一月は行き、二月は逃げ、三月は去る。
このよく知られた言葉は、単なる季節の言い回しではなく、時間の質が変化する瞬間を的確に捉えた表現です。とりわけ二月は、暦の上の短さ以上に、私たちの意識から静かに姿を消していく月として感じられます。
年が明け、新年度に向けた研究計画や教育方針がようやく輪郭を持ち始めた頃、二月はすでに折り返し点を過ぎています。来年度のカリキュラム・シラバス・実習資料の作成、講義の準備、研究の進捗、論文執筆、学位審査や評価に関わる業務が同時に進行し、日々の判断は常に先を見据えたものになります。本日も大量のメールや書類に埋もれて過ごしているうちに、夜になってしまいました。臨床実習を終えた医学類の学生の方が久しぶりに研究室に来てくれました。
思考が未来へと引き伸ばされる一方で、現在の時間は驚くほどの速さで逃げていきます。二月が「逃げる」と感じられるのは、単なる多忙さのためではありません。そこには、医学・研究の現場に特有の緊張感があります。年度末を目前に控え、成果としてまとめるべき研究、次世代へと引き継ぐ教育、学生や若手研究者の進路に関わる決断が、静かに積み重なっていきます。私たちはその重みを知っているからこそ、時間が逃げていく感覚をより鋭く意識するのだと思います。逃げる二月は決して空白の月ではありません。この短い時間の中で交わされた議論、精査されたデータ、推敲を重ねた文章、そして学生たちが示す成長の兆しは、確かに研究と教育の現場に刻まれています。時間は過ぎ去っても、そこで積み重ねられた思考と努力は、次の季節へと確実につながっていきます。
二月は、去りゆく年度と新たな始まりを結ぶ通過点です。逃げていく時間を嘆くのではなく、その中で何を積み重ね、何を次へと託すのかを静かに見定める月でもあります。この二月に得られた経験と決意を携え、私たちは次の年度へと、確かな一歩を踏み出していきたいと考えています。





