Die Neue These

アントニオ・マリア・ヴァルサルヴァ(Antonio Maria Valsalva, 1666–1723)は、1666年1月17日にイタリア(当時の教皇領)イモラで生まれた解剖学者・医師で、耳の解剖と機能研究に大きな足跡を残しました。彼の名が冠される「Valsalva手技」は、今日では循環器領域の負荷試験として広く知られていますが、歴史的な原点はむしろ耳鼻科領域にあります。すなわち、鼻と口(あるいは気道)を閉じて呼気努力を行い、中耳へ空気を送り込むことで耳管(Eustachian tube)の開通性を確かめ、圧を平衡化する発想が、耳管機能評価やいわゆる“耳抜き”の基礎として位置づけられます。ヴァルサルヴァは主著『De aure humana tractatus』(1704)の文脈でこの方法を論じたとされ、耳管を介した中耳換気の理解に貢献しました。

一方で「Valsalva」という語は、現代臨床では二つの意味で混同されがちです。耳鼻科・ダイビング文脈では中耳圧の調整(耳管を開く操作)を指すのに対し、循環器・神経内科文脈では閉じた声門に対するいきみ(ストレイン)として、胸腔内圧上昇による血行動態変化を利用します。後者は、静脈還流や血圧・心拍の反射性変化を含む「4相」の枠組みで整理され、頻拍の迷走神経刺激や自律神経機能評価などに応用されました。

彼の名は心臓解剖にも残り、大動脈基部の膨隆である大動脈洞(Sinuses of Valsalva)として頻用されます。大動脈洞(Sinuses of Valsalva)は、大動脈弁の直上にある大動脈基部(aortic root)の拡張部で、解剖学的には弁輪から洞管移行部(STJ)までの範囲に位置します。通常は三尖弁に対応して3つの洞があり、右冠動脈洞・左冠動脈洞にはそれぞれ冠動脈の起始(ostium)が存在し、無冠洞には起始がありません。洞の形状は血流に渦を生じさせ、弁尖の壁への貼り付き防止や拡張期への移行時の滑らかな弁閉鎖に寄与すると説明されます。臨床では心エコーやCT/MRIで洞径、STJ、上行大動脈径などを系統的に測定し、拡張の部位と程度を追跡します。関連病態としてValsalva洞動脈瘤(SVA)があり、限局性拡張が破裂すると右心系への短絡を生じ、連続性雑音や急性心不全の契機となり得ます。

本日も、来年度の解剖学関係の講義や実習のことを考えながら(心配しながら)、学位審査会に複数参加しました。スーツを着た学生の方は一生懸命、審査員の質問に答えてくれました。審査員のために、ハンドアウトも用意してくださった学生の方もいらっしゃいました。

夕方、臨床実習を終えた医学類の学生の方が顕微鏡観察と写真撮影をしてくださいました。研究室内を顧みて、「むかしをいまに なすよしもがな」「あやしうこそものぐるほしけれ」と感じること、精神が挫滅する想いをすることも多々ありますが、今身近にいる若い方と一緒に未来を描くことに専心したいと思います。

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