ルイージ・ガルヴァーニ(Luigi Galvani, 1737–1798)は、18世紀イタリア・ボローニャに生まれた解剖学者・生理学者であり、生体電気という概念を初めて医学・生理学の中に明確に導入した人物です。
1. 略歴と学術的背景
- 出生:1737年、ボローニャ(教皇領)
- 所属:ボローニャ大学(解剖学・産科学)
- 専門:解剖学、生理学、産科学
当初は医学・哲学・神学を幅広く学び、後に解剖学者として大学に残りました。18世紀後半のボローニャは、解剖学と自然哲学の伝統が強い学術都市であり、ガルヴァーニの研究はその文脈の中で生まれています。
ボローニャ大学で解剖学を講じていたガルヴァーニは、神経と筋の関係に強い関心を持ち、動物の運動がどのように制御されているのかを実験的に探究していました。その研究過程において、解剖したカエルの後肢に金属製の器具が触れた際、外部から明確な刺激を加えていないにもかかわらず筋収縮が生じる現象を繰り返し観察しました。とりわけ雷雨時や静電気発生装置の近くでこの反応が顕著になることから、ガルヴァーニは神経と筋そのものが電気的性質を持ち、生命活動の内部に電気が存在すると考えるに至りました。彼はこの概念を「動物電気(electricità animale)」と呼び、神経が筋収縮を引き起こす本質的な媒体は電気であるという、当時としては極めて革新的な仮説を提示しました。
この見解は、同時代の物理学者アレッサンドロ・ボルタとの間に大きな論争を引き起こしました。ボルタは、筋収縮を生じさせた電気は生体由来ではなく、異なる金属同士の接触によって発生すると主張し、いわゆる接触電気説を唱えました。この対立は一見すると相互に排他的な議論に見えますが、結果として両者の研究は異なる方向から科学を大きく前進させました。ガルヴァーニの思想は、神経伝導の電気的本質という概念へと発展し、後の電気生理学や神経科学の基盤を形成しました。一方でボルタは電池を発明し、人工的に安定した電流を生み出す技術を確立しました。
ガルヴァーニ自身はフランス革命後の政情変化により大学職を失い、晩年は不遇のうちに生涯を終えましたが、その学術的価値は死後に再評価され、「神経電気生理学の父」の一人として位置づけられています。今日、神経活動の電気的計測や電気刺激療法、さらには脳神経工学に至るまで、生命現象を電気という物理量で理解する視点は医学と生命科学の中核を成しており、その源流にはガルヴァーニの実験的洞察と思想が息づいています。
スタッフの出身講座では、「ガルバニー会」という同窓会誌がありました。2001年刊行の冊子を久しぶりに開いてみて、懐かしく思いました。
秋学期の試験期間に入っているので、学類生たちは試験勉強に忙しいようです。来週には、医学類の神経系の試験もあります。12月はM4~M5の学生たちは臨床実習で学外に行くことも多いです。体に気をつけて頑張ってほしいものです。



