彼岸過迄

九月も下旬に入ると、夏の名残を抱えつつも、確かに秋が歩み寄ってくるのを肌で感じるようになります。昼間にはまだ陽射しの強さが残るものの、朝夕の空気には冷ややかさが混じり、虫の音がひときわ冴え渡ります。稲穂は黄金色に揺れ、田の畔を渡る風は実りの香りを運び、農村では収穫への準備が忙しさを増していきます。

空を見上げれば、入道雲の勢いは影を潜め、代わりに高く澄んだ鰯雲や鱗雲が秋の訪れを告げます。夕暮れは日ごとに早まり、茜色から群青へと移り変わる空を背景に、彼岸花が燃えるように咲き誇る姿は、どこか寂しさと力強さを同時に感じさせます。この時期は、長月とも呼ばれる九月ならではの「夜の長さ」を意識させられる季節でもあります。月明かりが虫の声と溶け合い、人々の心に静けさと余情を与える頃。夏から秋への端境は、過ぎ去った日々を惜しみながらも、新しい季節への期待と安らぎを抱かせてくれる、日本の美しい移ろいの瞬間を感じます。

本日は、大学院の研究発表会でした。博士論文の審査会もありました。午後になって、医学類の学生の方が実験に来てくれました。医療科学類の学生は、朝からせっせと作業していました。往く夏を惜しみつつ、若き才能の輝きを見つめたいものです。

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