第262回つくばブレインサイエンス・セミナー定例会が開催されます

日時:2021年6月22日(火)18:00~ 

場所:下記URLから視聴できます。                     
https://us02web.zoom.us/j/87564226432?pwd=TFRWbktiYkxUdm4vOUhzS3B2WW1Edz09

ミーティングID: 875 6422 6432
パスコード: 5YxGFd      

演題:『局所的な樹状突起内輸送制御を基盤とした記憶書き換えメカニズムの解明』
演者:岩田卓(Suguru Iwata)先生 (筑波大学医学医療系

要旨

神経細胞の細胞体から伸びる樹状突起は、数十、数百にも上る他の神経細胞からの情報を受け取っている。同一の樹状突起内に存在する複数のシナプス後肥厚(postsynaptic density; PSD)間でのタンパク質組成のバランスは様々なメカニズムによって制御されていることが知られているが、その詳細については実のところよくわかっていない。さらには同一樹状突起内に存在するシナプス間の距離が遠いもの(例えば、樹状突起の起始部と遠位部に存在するシナプス)に至っては、それらのタンパク質組成バランスを制御する機構がそもそも存在するかどうかということさえ分かっていない。
 PSDでのタンパク質組成を制御する分子機構として、局所的なタンパク質の分解と合成が知られている。タンパク質の分解には、プロテアソームが標的のポリユビキチン化タンパク質を認識して分解するユビキチン-プロテアソームシステム(UPS)が関与することで、PSD内でのタンパク質組成を調節する。UPSはPSDからタンパク質を除去するだけでなく、さまざまなシグナル伝達カスケードにも影響を及ぼし、シナプスのリモデリングを制御する。また一方では、タンパク質合成を必要とするさまざまな形態の可塑性を維持するために、局所的なタンパク質合成が必要となる場合がある。神経細胞が刺激されると3 ‘非翻訳領域(3’UTR)を介したメカニズムによって、樹状突起に局在するmRNAの翻訳を制御する様々なシグナル伝達経路が活性化される。
 今回の講演においては、分子モーターKIF17の分解と合成による局所的な樹状突起内輸送制御の解明とそれらによる樹状突起リモデリングの実態解明を目指す研究について紹介する。本研究では、NMDA型グルタミン酸受容体を介した神経活動によって、分子モーターKIF17がプロテアソームによって急速に分解されることが判明した。KIF17の分解に伴って樹状突起内での微小管を基盤としたKIF17による分子モーター輸送が一時的に中断されることも示されている。また、同じくNMDA型グルタミン酸受容体を介した神経活動がKIF17 3’UTRによって駆動される局所的なKIF17の合成を誘発することも実証された。樹状突起内で合成されたKIF17はその後に合成された場所を起点とした輸送を開始しており、神経活動が局所的な輸送制御を引き起こしていることが示された。さらに、海馬内神経細胞のKIF17局所翻訳機能を欠失させたマウスには、認知や記憶改変などの高次脳機能に重大な障害がもたらされることも分かった。これらの結果から、分子モーターKIF17は神経活動依存的なタンパク質分解・合成による発現量制御を受けており、この局所的なKIF17輸送制御は認知や記憶の改変などの高次脳機能において重要な役割を担っていると考えられる。本研究によって、単一の樹状突起が記憶演算のユニットとしてどのように機能するかを深く理解するのに役立つことが期待される。

岩田先生は、医学医療系 生命医科学域 解剖学・神経科学研究室(当研究室)の助教です。主に東京大学大学院 医学研究科で行われた研究について講演いただく予定です。

参考文献

Iwata S, Morikawa M, Takei Y, Hirokawa N. An activity-dependent local transport regulation via degradation and synthesis of KIF17 underlying cognitive flexibility. Science Advances 16 Dec 2020: Vol. 6(51).

つくばブレインサイエンス協会(TBSA)

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Microtubule, 3D illustration. A polymer composed of a protein tubulin, it is a component of cytoskeleton involved in intracellular transport, cellular mobility and nuclear division

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