ふと微笑んで枝を離れる

年度末の本日は冷たい雨に包まれています。一雨ごとに暖かくなっていくことでしょう。本日は離職される方のお見送りをしました。静謐な空間に、きれいに片づけられたデスクがぽつんと置かれていました。年度の終わりは、区切りであると同時に、関係のかたちが静かに変わる時期です。教室や研究室に残る気配は、昨日までと変わらぬようでいて、確かに何かが抜け落ちています。そんな折に降る春の雨は、激しさを伴わず、ただ持続的に空間を湿らせ、言葉にしきれない余韻を引き延ばします。卒業式で大勢の学生が満ちた医学棟周辺は、静かな春の雨に包まれていました。別れはしばしば一瞬の出来事として訪れますが、その実感は、雨のように時間の中でゆっくりと浸透していきます。交わした言葉や視線の断片が、濡れた地面に映る光のように揺らぎながら、記憶の底に沈んでいきます。

散るという飛翔のかたち 花びらはふと微笑んで枝を離れる (俵万智 『サラダ記念日』)

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