誤差と月光のあいだ

研究棟のベランダで温湿度を記し、月の出高度を計算してみます。十五夜と呼ぶが、厳密には満月とは限りません。軌道傾斜と視差の端数が、わずかな欠けをつくります。そう書き付けながら、私は学びます。世界は“ほぼ”で出来ている、と。視直径約0.5度の円が、街灯よりも遠く、やかんの湯気よりも身近な時間を連れてきます。幼少のころ覚えた「うさぎ」の模様は、今は玄武岩の海だと知ることができます。科学は清潔を好むように思いますが、観測者の生活臭を完全には拭えません。研究とは、月の明るさを測りつつ、その明るさにすがらない訓練でもあります。確からしさを積み上げ、断定を急がない。曇れば待ち、晴れれば記します。本日も極星のごとき明るさの才能が研究室に集い、実験とラボセミナーを行うことができました。明日も月は満ち欠けを続け、余白は私の仕事となることでしょう。

若い方の笑顔はとてもよいものですね!

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