小さな画像、大きな転換

1959年8月7日、NASAはフロリダ州ケープカナベラルから人工衛星Explorer 6号を打ち上げました。ロケットはThor-Able IIIを用いました。衛星の主目的は放射線帯・地磁気・宇宙線・微小流星体の観測でしたが、実験的にTV光学スキャナも搭載し、日中の雲画像取得を狙いました。8月14日には高度約1万7千マイル(約2.7万km)で中央太平洋の雲域を撮影し、衛星からの最初の地球写真を送信しました。画像は粗い白黒モザイクでしたが、宇宙から雲分布を観測できることを実証し、翌1960年の気象衛星TIROS-1などの開発を後押ししました。なお、この写真は地球全体の円盤像ではありませんでした。全地球のカラー・フルディスク像は1967年のATS-3が初めて取得しました。Explorer 6号の成果は、現代の気象衛星観測の礎となりました。

俯瞰的に物事をとらえることは、Explorer 6号が地球を外側から見せた意義と重なります。まず、全体像を先に捉えることで部分の位置づけが明確になるため、局所最適化に陥りにくくなります。次に、文脈と相互作用を見通せるため、単一要因に原因を帰す誤りを減らせます。さらに、スケールをまたいだ接続(分子→細胞→臓器→個体→集団)を意識でき、研究や教育の設計が一貫します。粗い白黒画像であっても視点の転換がパラダイムを動かしたように、視座のデザインは技術の精緻化に先行します。

大学院での研究活動も「木を見て森も見る」トランススケーラブルにしたいものです。

Space satellite with antenna and solar panels in space against the background of the earth.

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