第13回日本DOHaD学会学術集会は、2024年8月2日(土)から8月3日(日)にかけて、東京都中央区のコングレスクエア日本橋にて開催されます。本学会のテーマは「DOHaDと先制医療/女性医療」であり、出生環境が将来の健康に影響を与えるというDOHaD(Developmental Origin of Health and Disease)の考え方に基づいて、現代日本の喫緊の課題に向き合うものです。日本では現在、出生児の約10%が低出生体重児(SGA)であり、その増加が成人病の発症率の上昇と関連すると考えられています。背景には、若年世代の痩せ傾向、妊娠中の体重増加不足、高齢出産、生殖補助医療の利用増加など、胎児期の環境変化が関与しており、受精時から出生までの条件が成人期の健康を左右するという現実が明らかになっています。さらに、近い将来には成人の7人に1人が小児がん経験者になるという推計もあり、小児期の集学的ながん治療が次世代に与える影響についても真剣に考える必要があります。このような現状に対して、出生前後からの健康リスクを予測し、早期に対応する“先制医療”の重要性が高まっており、国や医療現場も注目しています。多くの研究者や臨床医が一堂に会し、こうした課題を多角的に議論する本学術集会は、今後の日本における健康長寿の実現に向けて大変意義深い機会となるでしょう。日本橋駅直結という利便性の高い会場で、盛夏の時期ではありますが、皆様の積極的なご参加が期待されています。
DOHaD13-poster第13回日本DOHaD学会学術集会 詳細まとめ(2025年)
■ 開催概要
- 会期:2025年8月2日(土)~8月3日(日)
- 会場:コングレスクエア日本橋(東京都中央区日本橋1-3-13)
- 大会長:堀川玲子(国立成育医療研究センター 内分泌代謝科)
- テーマ:「DOHaDと先制医療/女性医療」
■ 趣旨と背景(大会長挨拶より)
- DOHaD(Developmental Origins of Health and Disease)の視点から、低出生体重児(SGA)増加と成人病罹患率の関連を重視。
- 先制医療の推進と、女性の健康・がん経験者の次世代影響を新たな研究課題として提起。
- 小児期治療の長期影響や高齢出産、妊娠中の栄養状態など、胎生期からの健康リスク管理の重要性を訴える。
■ 主なセッション構成と内容
🔷 特別講演(全4題)
- 田中智洋(名古屋市立大学)
- 「マルチオミクスによる肥満症の視床下部モデリング解析」
- 肥満と視床下部炎症の関連、リモデリングの分子基盤を解明。
- Dr. Jacquie Bay(オークランド大学)
- 思春期から始まるDOHaD教育・社会実装の可能性を講演。
- 押味貴之(国際医療福祉大学)
- ChatGPTを活用した医学英語論文執筆法の実践紹介。
- 束村博子(名古屋大学)
- キスペプチンニューロンの性差と生殖調節メカニズム。
🔷 シンポジウム
- 世代間伝搬の機序と制御
- 高橋悠太(熊本大学):エピジェネティック情報の世代間継承
- 有馬勇一郎(熊本大学):母子ケトン代謝と心筋発達
- 根本崇宏(日本医科大学):倹約型体質の世代間継承と栄養介入効果
- 女性医療の現在と未来
- 片井みゆき(政策研究大学院):性差医学とジェンダード・イノベーション
- 小宮ひろみ(成育医療研究センター):ライフステージに応じた女性の健康促進
- 松原圭子:社会課題への挑戦とオープンイノベーション
- 小児がん経験者と次世代の先制医療
- 小児AYA世代の栄養管理(大阪樟蔭女子大)
- 性腺機能と生殖毒性評価(森山記念病院・国立医薬品食品衛生研究所)
🔷 優秀演題賞候補(SP-1〜SP-8)
例:
- 妊娠期のメチル水銀曝露が次世代妊孕性に与える影響(東京工科大)
- 自閉スペクトラム症新生児と臍帯血中酵素の関連(福井大学)
🔷 一般口演(OR1・OR2)
例:
- 妊娠中の喫煙と胎児脳発達の影響(実践女子大)
- 妊婦の folic acid 濃度と喘鳴の関連(滋賀医大)
- プレコンセプションケアと出生アウトカム(成育医療研究センター、東北大)
🔷 ポスターセッション(P-1〜P-9)
例:
- ケトン体と腸内細菌叢(千葉大学)
- 父親の薬剤曝露による子孫行動異常(昭和医大)
- 看護学部学生の栄養とメンタルヘルス(滋賀医大)
■ D-1 グランプリ
- DOHaDの視覚化プレゼン大会「Visualize-It Grand Prix」
- 若手研究者の自由な表現と発信力を競う企画。
■ ランチョンセミナー・サテライト企画
- SGA性低身長診療(菊池 透)/早産児の糖・脂質代謝(長野 伸彦)
- 小児肥満と骨成長(磯島 豪)
■ 関連イベント
- 国際DOHaD会議カウントダウン企画
- 国内外のDOHaD研究者による講演(福岡秀興、Keith Godfrey ら)
- 8月4日に京都大学東京オフィスでサテライト開催
■ 学会の意義
- 出生時から始まる疾患リスクに対し、「予測→予防→実装」の循環型医療を目指す。
- 女性と小児、そして次世代の健康を中心に据えたトランスレーショナルな議論が展開される。
