知の庭を彩る風

今年は、生物学類と医学類の若き才能が研究室に参加してくださり、また新たにスタッフも加わり、新しい風が研究室に吹きました。解剖学は教育の比重が大きい分野ですが、教育を通して触れ合った若き才能と共に新しい学問を描き出すことができる機会に恵まれていると思います。また、スタッフが解剖学教育に落ち着いて取り組めるのは、研究室でしっかりと研究を進めて下さる研究室演習学生、卒業研究生、大学院生・技術支援員の方がいるためです。

研究室における優秀な人材の確保と流出の防止は、その成果や発展に直結する重要な課題であり、これを実現するためには様々な取り組みが必要です。優秀な人材を集めるためには、研究室の魅力的な研究テーマやビジョンを提示することが第一歩です。独創性が高く、革新性のある研究テーマに取り組むことで、志の高い研究者や学生を引きつけることができます。また、研究設備の充実や柔軟な働き方の導入、国内外の研究ネットワークへのアクセスを促進することで、研究環境の魅力を高めることができます。さらに、フェローシップや奨学金を提供することで、経済的な不安を軽減し、優秀な人材が研究に集中できる環境を整えることが重要です。

優秀な人材の流出を防ぐためには、公正で透明性のある評価制度の構築が不可欠です。メンバーが自身の努力や成果が正当に評価されていると感じられる仕組みを整えることで、満足度を高め、研究室への貢献意欲を維持できます。また、学会発表や論文執筆の機会を積極的に提供し、キャリア支援と成長機会を保証することで、研究室での経験が個人の将来にとって有益であると感じさせることができます。良好な人間関係を構築することも流出防止に寄与します。オープンで協力的な雰囲気を醸成し、メンバー同士が相談しやすい環境を作ることが重要です。さらに、過剰な業務負担を避けるために適切な役割分担を行い、燃え尽き症候群を防ぐことも必要です。

経済的な安定を提供することも、特に若手にとって欠かせない要素です。安定した研究資金の確保や給与の支給は、他の研究機関や業界への流出を防ぐ上で効果的です。研究室のビジョンを明確にし、これを外部に積極的に発信することは、新しい人材を引きつけるだけでなく、現在のメンバーが研究室の目標に共感し、長期的に貢献する動機付けにもなります。これらの取り組みを通じて、優秀な人材が集まり、継続的に活躍できる研究室運営を実現することが可能となると考えられます。

来年の干支は巳(蛇)です。巳年は、十二支の中でヘビを表す年として広く認識されており、ヘビが古くから「再生」や「復活」「永遠」「脱皮による変化」といった豊かな象徴性をもって語り継がれてきたことに深く関わっています。私たちの研究室は、来年創立10周年を迎えます。初代教授の河野邦雄先生の業績をまとめる計画を実施中です。来年は、若い才能と共に「革新」を実現したいものです。

Traditional Japanese phoenix tattoo with red and gold hues, isolated

天地有正氣 雜然賦流形 天地に正気有り 雑然として流形を賦く

下則爲河嶽 上則爲日星 下りては則ち河嶽と為り 上りては則ち日星と為る

於人曰浩然 沛乎塞蒼冥 人に於ては浩然と曰い 沛乎として蒼冥に塞つ

皇路當淸夷 含和吐明庭 皇路清夷なるに当たりては 和を含みて明廷に吐く

時窮節乃見 一一垂丹靑 時窮すれば節乃ち見れ 一一丹青に垂る

在齊太史簡 在晉董狐筆 斉に在りては太史の簡 晋に在りては董狐の筆

在秦張良椎 在漢蘇武節 秦に在りては張良の椎 漢に在りては蘇武の節

爲嚴將軍頭 爲嵆侍中血 厳将軍の頭と為り 嵆侍中の血と為る

爲張睢陽齒 爲顏常山舌 張睢陽の歯と為り 顔常山の舌と為る

或爲遼東帽 淸操厲冰雪 或いは遼東の帽と為り 清操氷雪よりも厲し

或爲出師表 鬼神泣壯烈 或いは出師の表と為り 鬼神も壮烈に泣く

或爲渡江楫 慷慨呑胡羯 或いは江を渡る楫と為り 慷慨胡羯を呑む

或爲撃賊笏 逆豎頭破裂 或いは賊を撃つ笏と為り 逆豎の頭破れ裂く

是氣所磅礡 凛烈萬古存 是の気の磅礡する所 凛烈として万古に存す

當其貫日月 生死安足論 其の日月を貫くに当っては 生死安んぞ論ずるに足らん

地維頼以立 天柱頼以尊 地維は頼って以って立ち 天柱は頼って以って尊し

三綱實係命 道義爲之根 三綱 実に命に係り 道義 之が根と為る

嗟予遘陽九 隷也實不力 嗟 予 陽九に遘い 隷や実に力めず

楚囚纓其冠 傳車送窮北 楚囚 其の冠を纓し 伝車窮北に送らる

鼎鑊甘如飴 求之不可得 鼎鑊 甘きこと飴の如きも 之を求めて得可からず

陰房闃鬼火 春院閟天黑 陰房 鬼火闃として 春院 天の黒さに閟ざさる

牛驥同一皂 鷄棲鳳凰食 牛驥 一皂を同じうし 鶏棲に鳳凰食らう

一朝蒙霧露 分作溝中瘠 一朝霧露を蒙らば 分として溝中の瘠と作らん

如此再寒暑 百沴自辟易 此如くして寒暑を再びす 百沴自ら辟易す

嗟哉沮洳場 爲我安樂國 嗟しい哉沮洳の場の 我が安楽国と為る

豈有他繆巧 陰陽不能賊 豈に他の繆巧有らんや 陰陽も賊なう不能ず

顧此耿耿在 仰視浮雲白 顧れば此の耿耿として在り 仰いで浮雲の白きを視る

悠悠我心悲 蒼天曷有極 悠悠として我が心悲しむ 蒼天曷んぞ極まり有らん

哲人日已遠 典刑在夙昔 哲人 日に已に遠く 典刑 夙昔に在り

風簷展書讀 古道照顏色 風簷 書を展べて読めば 古道 顔色を照らす

「正気の歌」(文天祥)

文天祥の「正気の歌」(正氣歌)は、中国南宋時代の詩人であり政治家でもあった文天祥が、元朝による捕虜生活の中で書いた詩です。この詩は、彼の忠誠心や節義、正義を称え、彼自身の人生観や哲学を反映した壮大な内容となっています。

(2024年12月27日掲載)

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