Journal Club (December 21, 2024)

BMJ 2024; 387 doi: https://doi.org/10.1136/bmj-2024-081814 (Published 20 December 2024)

Dexterity assessment of hospital workers: prospective comparative study 病院スタッフの器用さの評価:前向き比較研究

Tobin Joseph, Michael Drozd et al.

Leeds Teaching Hospitals NHS Trust, Leeds, UK

Abstract

この研究の目的は、バズワイヤーゲームを用いて異なる病院スタッフの手先の器用さとプレッシャー下での冷静さを比較することであった。前向き観察比較研究として、2024年に英国リーズのリーズ教育病院NHSトラストで、医師60名、外科医64名、看護師69名、非臨床スタッフ61名の計254名が参加した。主要な評価項目は、5分以内にバズワイヤーゲームを成功裏に完了する率と、ゲーム中の悪態や苛立ち音の発生頻度であった。結果として、外科医の成功率は84%(n=54)で、医師57%(n=34)、看護師54%(n=37)、非臨床スタッフ51%(n=31)と比較して有意に高かった(P<0.001)。さらに、時間経過分析では、外科医が年齢や性別に関係なく最も早くゲームを完了したことが示された。悪態をつく割合は外科医が50%(n=32)で最も高く、次いで看護師30%(n=21)、医師25%(n=15)、非臨床スタッフ23%(n=14)であった(P=0.004)。一方、フラストレーションから出る音は非臨床スタッフが最も多く75%、次いで看護師68%、外科医58%、医師52%の順であった。

結果

  • バズワイヤーゲームの成功率: 外科医の成功率は84% (n=54/64)と他のグループを大きく上回り、医師57% (n=34/60)、看護師54% (n=37/69)、非臨床スタッフ51% (n=31/61) だった (P<0.001)。
  • 完了までの時間: 外科医の中央値は89秒(四分位範囲52-169秒)で最速。医師は120秒(65-277秒)、看護師は135秒(92-210秒)、非臨床スタッフは161秒(104-264秒) (P<0.001)。
  • 罵声の頻度: 外科医が最も高い50% (n=32)で、次いで看護師30% (n=21)、医師25% (n=15)、非臨床スタッフ23% (n=14) (P=0.004)。
  • 苛立ち音の頻度: 非臨床スタッフが最も多く75% (n=46)、看護師68% (n=47)、外科医58% (n=37)、医師52% (n=31) (P=0.03)。
  • 年齢や性別による調整後の分析: 外科医は他の職種よりも一貫して高い成功率を維持。
図2は、バズワイヤーゲームにおける病院スタッフの成功率と成功までの時間を職種ごとに比較した結果を示しています。上部の棒グラフでは、5分以内にゲームを成功させた割合が示されており、外科医が最も高い成功率(約84%)を記録しました。一方、医師は57%、看護師は54%、非臨床スタッフは51%であり、外科医が他の職種よりも有意に優れていることが確認されました(P<0.001)。下部のKaplan-Meier曲線は、各職種がゲームを成功させるまでの時間を示しており、外科医は最も短時間でゲームを成功させる傾向が見られました。特に、外科医の曲線は他の職種よりも急な立ち上がりを示し、成功率が高いことを視覚的に強調しています。対照的に、非臨床スタッフは成功までの時間が最も長く、医師と看護師はその中間に位置しました。この時間に関する分析でも、グループ間の違いは統計的に有意(ログランクP<0.001)であり、外科医の手先の器用さと迅速な作業能力が際立つ結果となりました。

議論

  • 主な発見: 外科医は他の職種よりもバズワイヤーゲームを成功させる能力に優れ、時間的にも効率が高かった。一方で、罵声(悪態)の頻度が最も高く、感情的反応が顕著だった。
  • 既存研究との比較: 医師と外科医の器用さの違いを否定する過去の研究もあるが、本研究では外科医が明確に優れていた。特に、訓練や手先を使う頻度の差が影響している可能性がある。
  • 苛立ち音と罵声の特性: 苛立ち音が多い非臨床スタッフは、日常的に迅速なタスク処理に対するプレッシャーを受けている可能性があり、それが苛立ちの表出につながったと考えられる。一方で、罵声を用いる外科医はストレスを解消し、冷静さを保つ手段として利用している可能性が示唆された。
  • 外科医の優位性の背景: 手術中の細かな動作や高圧下での冷静な判断が求められる職務特性により、外科医が高い器用さを示した可能性がある。これは、訓練の成果や職業選択時の適性の影響を反映していると考えられる。

臨床への応用

  • トレーニングへの統合: バズワイヤーゲームを手先の器用さを向上させる訓練ツールとして採用する可能性。特に外科医や看護師の初期トレーニングに有効と考えられる。
  • ストレス管理ツール: 苛立ち音や罵声の頻度が高い職種において、ストレス軽減を目的とした心理的介入の必要性が示唆される。
図3は、バズワイヤーゲーム中に病院スタッフが罵声を発した割合と、フラストレーションによる音(苛立ち音)を出した割合を職種ごとに比較した結果を示しています。上部のグラフでは、罵声の使用割合が棒グラフで示されており、外科医が最も高い割合(50%)を記録しました。次いで看護師(30%)、医師(25%)、非臨床スタッフ(23%)の順で、統計的に有意な差が確認されました(P=0.004)。この結果は、外科医がプレッシャーの高い状況で感情を言葉として表出する傾向があることを示唆しています。下部のグラフでは、苛立ち音の発生割合が示されており、非臨床スタッフが最も高い割合(75%)を示しました。次いで看護師(68%)、外科医(58%)、医師(52%)の順でした(P=0.03)。この結果から、非臨床スタッフと看護師は、ストレスを音として発散する傾向があることが分かります。これらの結果は、職種ごとに異なるストレス反応の表出方法を示しており、外科医は言語的な表現に、非臨床スタッフは音声的な表現に依存する傾向があることを浮き彫りにしています。                                      
https://www.neurosci.tsukuba.ac.jp/~takeilab/index.php/2024/12/21/20240000-210

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