12月15日は2024年最後の満月でした。出張で蓄積した書類(山盛り)を裁く手を止めて、研究棟から外に出て空を見ることにしました(筑波の空は広く、遠くまで見渡すことができます)。
初めての北陸地方出張は、雄大な立山連峰の美しさに驚いたり、素晴らしい研究発表を聞いたりしてとても有意義でした。一方で、想定通りに進まなかったこともあり、自分の至らなさも感じた一日でした。願わくば学会でしっかり勉強したかったのですが、溜まりにたまった仕事を片付けるべく、つくばに大急ぎで戻らなければなりませんでした。
12月の満月はアメリカの農事暦の関係で「コールドムーン」と呼ばれるとのことです。日本では「寒月(かんげつ)」という冬の季語があり、冬に冴えわたって見える月のことを指します。見上げた空には雲が少なく、年の瀬が近づく寒空に輝く月を見ることができました。
冷たく澄みわたる冬の空に浮かぶその光景は、ひときわ輝く才能ある学生を想起させます。寒月のように、厳しい環境の中でも清らかな明るさを失わず、努力の積み重ねで周囲を照らしてきた存在です。暗い夜の空にぽつりと浮かぶ星たちを引き立てる月のように、研究室という小宇宙の中で、多くの仲間を支え、導いてくれました。木星が寄り添うように共演する満月の姿は、才能ある学生の謙虚さと、他者との協調を思わせます。決して自己をひけらかすことなく、しかし確かな実力を秘め、その存在感は冬空の光景に負けぬほどの美しさと力強さを持っていました。
満月が沈んだ後の空は、静寂をより一層感じさせます。「寒月のごとく、澄みわたる心と確かな力で未来を照らす」ことを願うことにします。天高く駆ける才能に想いを馳せつつ、自らの為すべきことに向き合います。




「カムパネルラ、僕たち一緒に行こうねえ。」ジョバンニが斯う云いながらふりかえって見ましたらそのいままでカムパネルラの座っていた席にもうカムパネルラの形は見えずただ黒いびろうどばかりひかっていました。
ジョバンニはまるで鉄砲丸のように立ちあがりました。そして誰にも聞えないように窓の外へからだを乗り出して力いっぱいはげしく胸をうって叫びそれからもう咽喉いっぱい泣きだしました。もうそこらが一ぺんにまっくらになったように思いました。(宮沢賢治 『銀河鉄道の夜』)
