J Affect Disord. 2024 Aug 12:S0165-0327(24)01234-5. doi: 10.1016/j.jad.2024.08.020.

Preference for solitude paradox: The psychological influence of social isolation despite preference (孤独嗜好のパラドックス：社会的孤立の心理的影響)

Ryota Sakurai ¹, Masanari Sakurai ², Hiroyuki Suzuki ³, Yoshinori Fujiwara ³
Research Team for Social Participation and Healthy Aging, Tokyo Metropolitan Institute for Geriatrics and Gerontology, 35-2 Sakae-cho, Itabashi-ku, Tokyo 173-0015, Japan. Electronic address: r_sakurai@hotmail.co.jp.

Abstract

Background: Although a preference for solitude (PS) may mitigate the negative effects of social isolation (SI) owing to the enjoyment of time alone, its impact on mental health and its underlying factors remain unclear.

Methods: An Internet survey was conducted with 9000 individuals aged 20-79 years in August 2023 and the analyses were performed across three generations. SI was defined as contact with non-cohabitating family members or relatives and friends/neighbors less than once a week. The PS scale, which was used to assess whether a person preferred spending time alone, stratified respondents into three PS-level groups. Mental health status was evaluated using the WHO-5 (well-being), the K6 (distress symptoms), and the UCLA Loneliness Score (severity of loneliness) as the main outcomes. The mediation analyses assessed whether troublesomeness in socializing, a potential negative aspect of PS, could explain the association between PS and mental health status.

Results: A mixed-design two-way analysis of covariance showed that both SI and PS had significant main effects on all outcomes without interactions across generations, indicating that SI and higher PS were associated with poor mental health status. The association between higher PS and poor mental status was mediated by socializing troublesomeness across generations.

Limitations: The cross-sectional design prevented making causal inferences from the results. Additionally, sampling bias from Internet surveys may limit the generalizability of the results.

Conclusions: The results confirmed that there is no protective effect of PS on social isolation-related poor mental health. The hassle of socializing may partly explain why people with a higher PS experience poor mental status, including greater loneliness.

背景

孤独嗜好（PS）は、一人の時間を楽しむことによって社会的孤立（SI）の悪影響を軽減する可能性があるが、精神的健康への影響やその基礎となる要因は不明である。

方法

2023年8月に20～79歳の9000人を対象にインターネット調査を実施し、3世代にわたって分析を行った。SIは、同居していない家族や親戚、友人・隣人との接触が週1回未満と定義した。一人で過ごすことを好むかどうかを評価するPS尺度を用いて、回答者を3つのPSレベルのグループに層別化した。精神的健康状態は、WHO-5（幸福度）、K6（苦痛症状）、UCLA孤独スコア（孤独の重症度）を主要アウトカムとして評価した。媒介分析では、PSの潜在的な負の側面である人付き合いの面倒くささが、PSと精神的健康状態との関連を説明できるかどうかを評価した。

結果

二元配置共分散分析の結果、SIとPSは世代間の交互作用なしにすべての結果に対して有意な主効果を示し、SIとPSの高さが精神的健康状態の不良と関連していることが示された。PSが高いことと精神状態の不良との関連は、世代を超えた社交的な面倒くささによって媒介された。横断的デザインのため、結果から因果関係を推論することはできなかった。さらに、インターネット調査によるサンプリングバイアスは、結果の一般化可能性を制限する可能性がある。

結論

その結果、社会的孤立に関連した精神的健康の低下に対するPSの予防効果はないことが確認された。人付き合いの面倒さは、PSが高い人がより大きな孤独感を含む精神状態の不良を経験する理由の一部を説明するかもしれない。

Keywords: Loneliness; Mental health; Preference for solitude; Social isolation; Troublesomeness of socializing.

Background

社会的なつながりは、全ての世代において生活の質や健康にとって根本的に重要である。社会的孤立（Social Isolation: SI）は、他者との社会的つながりの客観的な欠如として定義され、健康に悪影響を及ぼすリスク要因として広く知られている。特に高齢者では、社会的孤立は認知症のリスク増加、冠動脈疾患や脳卒中の発症リスク、そして全原因死亡率の増加と関連している。これまでの研究では、社会的孤立が精神的健康に及ぼす負の影響、例えばうつ症状や幸福感の低下などが示されている。

一方で、孤独志向（Preference for Solitude: PS）が高い人々が社会的孤立を経験しても、必ずしも心理的障害を発展させない可能性があることが示唆されている。孤独は、一人で過ごす時間を楽しむことであり、孤独感（Loneliness）とは異なる。しかし、孤独志向が高いことが、必ずしも精神的健康に良い影響を与えるわけではないことが示唆されており、特に高齢者においては孤独が幸福感の低下に関連していることが報告されている。

本研究では、世代間の違いに注目し、孤独志向が高い人々が社会的孤立に対して精神的健康の恩恵を受けるかどうかを検証した。また、社交の煩わしさが孤独志向と精神的健康の関連を仲介するかどうかを調査した。

Discussion

この研究は、孤独志向（PS）が高い人々が社会的孤立（SI）による精神的健康への負の影響から守られるわけではないことを示している。むしろ、PSが高い人々はSIと同様に精神的健康が悪化しやすいことが確認された。

特に注目すべきは、社交の煩わしさがPSと精神的健康の関連を仲介している点である。これにより、PSが高い人々が社交を煩わしいと感じることが、精神的苦痛や孤独感の増加に直接的に関連していることが示唆された。

この研究結果は、孤独志向が必ずしも精神的健康に有益ではなく、特に社会的なつながりが弱い状況では、精神的健康のリスクを高める可能性があることを示している。今後の研究では、長期的な追跡調査を通じて、PSや社交の煩わしさが精神的健康の悪化を引き起こす因果関係をさらに明らかにすることが重要である。