Journal Club (May 13, 2024)

Cell. 2024 Feb 15;187(4):962-980.e19. doi: 10.1016/j.cell.2024.01.012. Epub 2024 Feb 2.

Microglia maintain structural integrity during fetal brain morphogenesis (ミクログリアは胎児の脳形態形成において構造的完全性を維持する)

Akindé René Lawrence 1Alice Canzi 1Cécile Bridlance 2Nicolas Olivié 3Claire Lansonneur 4Clarissa Catale 1Lara Pizzamiglio 5Benoit Kloeckner 6Aymeric Silvin 6David A D Munro 7Aurélien Fortoul 8Davide Boido 9Feriel Zehani 1Hugues Cartonnet 1Sarah Viguier 3Guillaume Oller 1Paola Squarzoni 1Adrien Candat 10Julie Helft 11Cécile Allet 12Francoise Watrin 8Jean-Bernard Manent 8Pierre Paoletti 5Denis Thieffry 13Laura Cantini 13Clare Pridans 14Josef Priller 15Antoinette Gélot 16Paolo Giacobini 17Luisa Ciobanu 9Florent Ginhoux 18Morgane Sonia Thion 3Ludmilla Lokmane 1Sonia Garel 19

Institut de Biologie de l’École Normale Supérieure (IBENS), École Normale Supérieure, CNRS, INSERM, Université PSL, Team Brain Development and Plasticity, 75005 Paris, France.

Abstract

Microglia (MG), the brain-resident macrophages, play major roles in health and disease via a diversity of cellular states. While embryonic MG display a large heterogeneity of cellular distribution and transcriptomic states, their functions remain poorly characterized. Here, we uncovered a role for MG in the maintenance of structural integrity at two fetal cortical boundaries. At these boundaries between structures that grow in distinct directions, embryonic MG accumulate, display a state resembling post-natal axon-tract-associated microglia (ATM) and prevent the progression of microcavities into large cavitary lesions, in part via a mechanism involving the ATM-factor Spp1. MG and Spp1 furthermore contribute to the rapid repair of lesions, collectively highlighting protective functions that preserve the fetal brain from physiological morphogenetic stress and injury. Our study thus highlights key major roles for embryonic MG and Spp1 in maintaining structural integrity during morphogenesis, with major implications for our understanding of MG functions and brain development.

脳に常在するマクロファージであるミクログリア(MG)は、多様な細胞状態を介して、健康と疾病において主要な役割を果たしている。胎生期のミクログリアは、細胞分布やトランスクリプトーム状態において大きな不均一性を示すが、その機能についてはまだ十分に明らかにされていない。ここで我々は、胎児皮質の2つの境界における構造的完全性の維持に、MGが果たす役割を明らかにした。異なる方向に成長する構造間のこれらの境界において、胚性MGは蓄積し、出生後の軸索関連ミクログリア(ATM)に類似した状態を示し、ATM因子Spp1が関与するメカニズムの一端を介して、微小空洞が大きな空洞性病変に進行するのを防ぐ。MGとSpp1はさらに、病変の迅速な修復に寄与し、生理的な形態形成ストレスや傷害から胎児の脳を守る保護機能を強調している。このように、我々の研究は、胎生期のMGとSpp1が形態形成中の構造的完全性を維持する上で重要な役割を果たすことを明らかにし、MGの機能と脳の発達に関する我々の理解に大きな示唆を与えた。

ハイライト

・Embryonic ATM-like microglia accumulate at key cortical boundaries 胚性ATM様ミクログリアは重要な皮質境界に蓄積する

•Microglia prevent the formation of cavitary lesions due to morphogenetic stress ミクログリアは形態形成ストレスによる空洞病変の形成を防止する。

•ATM-core factor Spp1 contributes to neuroprotective roles of microglia ATMコア因子Spp1はミクログリアの神経保護の役割に寄与する。

•Microglia and Spp1 contribute to the rapid repair of cavitary lesions ミクログリアとSpp1は空洞病変の迅速な修復に貢献します。

医学類M4のNさんが発表を頑張ってくれました!同じく医学類M3のHさんがプログレスセミナーを行いました。

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背景
ミクログリアが胎児の脳の発達において重要な役割を果たすことに焦点を当てている。胎児期の脳は急速に成長し、その過程で多くの物理的な変形が伴う。これらの変形は脳組織にストレスをもたらし、構造的な完全性を損なう可能性がある。ミクログリアは脳の主要な免疫細胞であり、通常は脳の健康と機能を維持するために活動していますが、その機能が胎児期の脳の発達特に形態形成のプロセスにどのように関与しているかは完全には理解されていない。

方法
本研究では、遺伝子改変マウスモデルを用いてミクログリアの分布と機能を調査した。胎児のマウス脳を用いて、ミクログリアが脳のどの部分に集中しているか、またその集中が脳の形態形成にどのように影響を与えるかを評価した。具体的な方法としては以下のような技術が用いられた:

  1. 免疫染色 – 特定のミクログリアマーカーを用いて、これらの細胞の正確な位置と密度を視覚的に特定した。
  2. 顕微鏡技術 – 高解像度の顕微鏡を使用して、ミクログリアの形態とその周囲の脳組織との相互作用を詳細に観察した。
  3. 遺伝的操作 – ミクログリアの特定の遺伝子を操作することで、これらの細胞の機能を変化させ、その結果脳形態形成にどのような影響を与えるかを分析した。
  4. 形態計測分析 – 脳組織の形態を定量的に分析し、ミクログリアの存在が脳の形態形成にどのように寄与しているかを評価した。

これらの方法を通じて、ミクログリアが胎児の脳発達における形態形成の過程でどのように機能しているかの詳細な解析が行われた。

図1では、胎児期のマウス脳におけるミクログリアの分布とその集約領域を示しています。この図は、ミクログリアがどのようにして脳の特定の境界領域に集中しているかを視覚的に表現しており、これらの細胞が胎児の脳形態形成中にどのように構造的完全性を支えるかを理解するのに役立ちます。
具体的には、以下のサブセクションに分かれています:
図1A: 単一細胞RNAシークエンシングデータを用いたミクログリアのクラスター分析を示しています。異なる発達段階におけるミクログリアの遺伝子発現プロファイルが描かれており、特定の発達時期におけるミクログリアの活性化状態や機能的特性を理解するのに役立ちます。
図1B-D: ミクログリアが脳の特定の領域、特に脳室周囲でどのように分布しているかを示しています。これには免疫染色と顕微鏡画像が用いられ、ミクログリアの位置と密度が詳細に観察されています。
図1E-F: 共焦点顕微鏡を使用して撮影された、ミクログリアの形態と細胞間相互作用を示す高解像度の画像です。ミクログリアがどのようにして他の脳細胞と相互作用しているか、またその過程でどのような構造的な変化が起こっているかが観察できます。

Discussion

この研究では、ミクログリア(MG)が脳発達中の組織の完全性を保持する上で不可欠な役割を果たしていることが示されている。脳の形態形成の初期段階で、MGは、大脳皮質の発達において重要な保護的役割を担っている。MGは胚発生の初期から脳に定着し、アストロサイトやオリゴデンドロサイトなどの後発の神経細胞が登場する前から、脳組織の構造と機能を支える基本的な細胞群として機能している。この研究で特に注目されるのは、MGが損傷の修復と組織の保護にどのように関与しているかという点である。これにより、MGが発生学的にも重要な意味を持つことが明らかである。

さらに、MGの機能においては、Spp1/OPNという特異的な因子が重要な役割を果たしていることが判明している。この因子は、ミクログリアが活動する際の骨の発達、傷の治癒、炎症反応などと関連があり、脳発達中の組織の完全性と速やかな損傷修復にも寄与していることが示されている。Spp1は、損傷部位において細胞外マトリックス(ECM)の积聚を調整することにより、損傷後の修復過程を助けることが確認されている。これにより、MGが脳の構造的な完全性を維持し、形態形成を支援するためのメカニズムがさらに解明されたのである。

この研究成果は、MGが単なる免疫細胞としてだけでなく、脳の発達と修復の過程で中心的な役割を担う細胞としての重要性を強調している。MGの動態と機能の解明は、脳形態形成の基本的なメカニズムを理解するだけでなく、神経発達障害や他の脳関連疾患の治療法の開発につながる可能性がある。さらに、MGとその誘導因子がどのようにして組織の整合性を保ち、早期の損傷から迅速な回復を促すかの理解は、将来の臨床応用においても非常に重要である。この研究により、脳発達の複雑なプロセスにおけるMGの役割が新たに明らかになり、病理的な脳配線が起こるメカニズムの解明へと繋がる道が開かれた。

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