2023年度篤志解剖体慰霊式が開催されます

筑波大学篤志解剖体慰霊式が、2023年年10月4日(水)に開催されます。M2を代表してYさんが「追慕の辞」を述べます。

〇日 時 令和5年10月4日(水) 14時00分~
〇場 所 大学会館講堂

〇式 次 第
開 式
学長挨拶
献体者氏名奉読
黙祷
追慕の辞(医学群長・白菊会代表・学生代表)
献 花
閉 式

筑波大学白菊会事務局

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令和5年度 つくば白菊巻頭言

ポストコロナ時代に思う解剖学教育の課題

筑波大学医学群長 田中 誠

3年前の春「コロナ禍に思う」と題し、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的な大流行)を迎える中、日々の不安や葛藤、人々の生活様式の変化や制限下での医学教育の難しさ、学生たちの戸惑いなどを報告させていただきました。今、新型コロナウイルス感染症の出口がようやく見え始め、この拙文が世に出る頃には、感染症法上の分類が2類から5類へと変更されているかもしれません。社会生活上の規制も緩和され、巷ではマスクを外して過ごす人の割合も増えているでしょう。この3年半の間、学生たちが本来は一堂に会して実施する実習・演習の類は、その教育効果を下げないよう私共は工夫を凝らし、時に複数教室を利用して、またある時は時差を設けて何とか実施してきました。最も困難と思われた病院実習も、分散登校やオンラインによる教育コンテンツを充実させるなど、各科で工夫して行ってきました。その中で、学生や教職員による厳密な健康管理と行動規制を行ったうえで、解剖学実習は一貫してコロナ禍以前と同様、十分な換気条件を確保した上で実施し、一人の感染者を出すことなく完遂できたことは大きな成果でありました。

では、コロナ禍が残した爪痕は負の遺産ばかりでしょうか?確かに、せっかく大学に入学したのにクラブ活動や友人たちとの直接の触れ合いは大幅に制限され、パソコンと向き合うばかりの授業を強いられた学生たちは本当に気の毒でした。一方、医学類ではハイフレックス型授業システムを構築することにより、学生が授業を受ける際の選択肢が増え、後からオンディマンドで復習することが日常となり、実際には多くの試験で成績が向上しました。我々教職員はオンライン会議やオンライン学会に習熟したことで、必ずしも対面で行う必要がない多くのことにも気付かされました。出張経費は節約でき、移動に伴う労力や時間は大幅に減りました。会議時間も心持ち短くなったと感じているのは私だけでしょうか?何より学んだことは、コロナ禍という逆境の中で、また立ち直る過程において、特に重要なのはレジリエンスという心の持ち方であるということでした。

そんな中、昨年ある関西の大学から大変ショッキングなニュースが発出されました。包み隠さず報告させていただきますと、この大学では医学教育のために寄せられた献体約50体が、適切に防腐処理されていなかったというものです。献体を管理する技術職員が1名しかいなかったこと、その職員が体調不良になったことなどが主因と考えられていますが、コロナ禍により業務の増大に拍車がかかったことも否めません。こうした問題を受け、文部科学省は全国の医学部、歯学部に献体業務を適切に行うよう点検を求める通知を出し、また国立大学医学部長会議では、問題意識の共有と対策について話し合いました。本学では幸い、技術職員3名体制でご遺体の搬送や処置・保存、実習のサポート等を行っており、適切なご遺体の管理を行っていますが、技術職員の育成には特殊な技能の伝承が必要であり、その習得には時間がかかります。全国的に献体管理に携わる技術職員は不足の一途をたどっており、今後こうした職員の育成と確保が解剖学教育を維持するうえで大きな課題として認識されるようになりました。

解剖学実習は、人体を解剖してその精緻な構造と機能を学ぶ、最も重要な医学教育であることは言うまでもなく、献体していただいた方やご遺族の思いを真摯に受け止め、医療人として成長する貴重な機会でもあります。献体はそうした教育を支える大変尊い制度であることを我々教職員一同は心に刻み、今後も適切なご遺体の管理をここにお誓い申し上げます。筑波大学白菊会の皆様におかれましては、引き続き医学教育へのご理解とご支援を賜りたく、ご協力をお願い申し上げます。

Bouquet of white autumn chrysanthemum, close up

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