第275回つくばブレインサイエンス・セミナーが開催されます

第275回つくばブレインサイエンス・セミナーが開催されます

日時:2023年6月27日(火)午後6時から対面形式

講演場所:筑波大学・医学エリア・健康医科学イノベーション棟8階講堂

演題:『サル内側前頭皮質の気分・情動調節機能の解明』

演者:中村晋也 (Shinya Nakamura) 先生(生理科学研究所 神経ダイナミクス研究部門)


要旨 内側前頭皮質 (MFC)、とりわけその腹側部は、 気分や情動を調節する脳領域の一つとして、長い間大きな関心を集めてきました。また、この領域は、うつ病患者において組織の萎縮や活動異常が生じていることが数多く報告されていることから、その責任病巣の一つとして注目されていますが、その因果関係についてはまだ完全には解明されていません。そこで本研究では、MFC腹側部の機能阻害がサルの行動や生理的状態に与える影響を調べる実験を行いました。脳機能介入法として、反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)をニホンザルに適用し、抑制性の効果をもたらす低頻度rTMSを用いました。その結果、MFC腹側部への低頻度rTMSによって、ケージ内自発活動量・社会性・意欲がそれぞれ低下するとともに、ストレスホルモンであるコルチゾールの血中濃度の上昇が認められました。一方、他のMFC領域(背側部または後部)を標的とした場合には、そのような重大な変化は観察されませんでした。また、即効性の抗うつ作用をもつケタミンの静脈投与により、低頻度rTMSによって誘発される異常な行動や生理的変化が改善されたことから、MFC腹側部への低頻度rTMSによってサルがうつ病様の状態に陥ったと考えられます。本研究の成果は、vMFCの機能不全がうつ病発症につながることを示唆するとともに、うつ病の病態を的確に再現した霊長類うつ病モデルとしての有用性を示していると言えます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください