本日は2019年10月16日号のNatureに掲載された「REST(転写抑制因子)と神経興奮は寿命に影響を及ぼす」という論文について勉強しました。神経活動と老化との関係について新たな知見を報告しています。ヒトで神経活動と寿命との相関を示す遺伝子発現データを示したのち、遺伝子改変モデル(線虫とマウス)を用いて機能解析を行った論文です。線⾍と哺乳類の間の解析から、REST–FOXO1またはSPR-3/4–DAF-16経路が、神経系機能が⽼化に影響を及ぼすメカニズムの主要な部分であることが⽰唆されます。また神経興奮の減少は、インスリン/IGF1シグナル伝達低下によって引き起こされる寿命延⻑の主要因であると考えられます。
責任著者のYanknerはハーバード大学医学部の教授で、2014年3月にも「REST and stress resistance in ageing and Alzheimer’s disease」(神経変性に対抗するRESTタンパク質)という論文をNature誌に発表しています。
ヒトの寿命を延ばすものは何か。B Yankner、J Zullo、D Drakeたちは今回、非常に長寿な人々の脳において、神経興奮の下方調節に関与すると考えられる転写シグネチャーを明らかにしている。転写抑制因子RESTが、これらの変化を仲介すると予測される。彼らは、線虫の一種Caenorhabditis elegansをモデルとして用い、神経興奮の抑制により実際に寿命が延長すること、そしてこの過程は、RESTや線虫オルソログの転写因子により仲介されていることを実証した。RESTオルソログの機能喪失変異は、神経興奮を上昇させ、長寿命のdaf-2変異個体の線虫の寿命を短縮したのに対し、RESTオルソログの過剰発現は、野生型線虫個体の寿命を延長した。同様に、脳でのREST遺伝子の条件的欠失は、加齢マウスにおいて大脳皮質の活動やニューロンの興奮性を上昇させた。RESTやその線虫オルソログおよび神経興奮低下はいずれも、長寿命に関連するフォークヘッド型転写因子FOXO1(哺乳類)とDAF-16(線虫)を活性化させる。従って、線虫からヒトに至るまで、神経興奮の状態は、RESTや関連転写因子により調節される老化過程の中心的モジュレーターである可能性がある。


