2005年当時(19年前)の筑波大学医学専門学群における解剖学カリキュラムは、人体構造の基本的理解を目的として構築されていました。開講期間は、5月9日(月)~6月17日(金)となっていて、現在のM2解剖学コースとほぼ同時期になっています。講義は6回から構成されており、実習を主体とするコースであることも現在と共通しています。
運動器や内臓器官の構造・機能を中心に、肉眼解剖学実習を通して学習するもので、以下の特徴があります。カリキュラムの一般目標(GIO)は、骨格・筋・神経・血管からなる運動器の構造と機能を理解すること、そして胸部・腹部・骨盤内臓の相互の立体的位置関係および血管・神経の分布を学ぶことにありました。また、行動目標(SBO)として、解剖学用語の習得や骨・筋・神経・血管の観察・説明能力の獲得が掲げられています。
カリキュラムは実習に多くの時間を割き、以下の内容が含まれていました。講義では、運動器の総論(骨・関節・筋の構造と機能)、末梢神経、脊髄神経、脳神経、自律神経などが取り上げられ、久野節二教授が主要な部分を担当しました。また、胸部・腹部・骨盤内臓の位置関係とその機能がカリキュラムの中核を成していました。実習は、人体の基本構造を深く学ぶため、骨格標本や人体模型を用いた解剖学実習が行われ、開始時には詳細な予定表と説明資料が配布されました。評価は、実習期間中の口頭試問2回、実習終了後のレポート提出、記述試験の3つを通して総合的に行われました。教科書には「解剖実習の手引き」などの専門書が指定され、図説や解剖学図譜を補助教材として使用しました。
筑波大学では、口頭試問を2回行い、レポートと記述試験を組み合わせた総合的な評価方法を採用していました。試験範囲には以下の内容が含まれます:
- 体表から観察できる主要な構造の説明
- 骨格および関節の構成
- 筋の働き、神経支配、支配血管
- 内臓の位置と相互の関係、基本的な働き
- 呼吸器系、消化器系、循環器系、感覚器系などの構成と機能
さらに、すべてのコアカリキュラム項目が試験対象となりました。
カリキュラムは、医師として必要な人体構造とその機能の基礎知識を、肉眼解剖学を通じて徹底的に学ぶ体系的なプログラムであったと考えられます。リソースパーソン(担当教員)は、久野節二先生 (筑波大学名誉教授)、野上晴雄先生 (現:日本保健医療大学 保健医療学部教授)、一條裕之先生 (現:富山大学医学系教授 )、成田正明先生 (現:三重大学大学院医学研究科発生再生医学講座教授)、首藤文洋先生 (前橋工科大学システム生体工学科教授)の5名であり、こちらも現在の担当教員数とほぼ変更はありません。
解剖学以外の講義や実習を行わない集中形式の解剖学実習は開始時に詳細なスケジュールや実習内容の説明を行い、学生の効率的な学習を支援する形式をとっていました。他大学と比較して剖出内容の管理が徹底されていると言えるかもしれません。
先人たちの築き上げた「筑波方式」カリキュラムの上に、新しき解剖学の風を形作りたいと考えています。
2005anatomy
月夜の浜辺
中原中也
月夜の晩に、
少年は、
波に向かって、
叫びたり、
月に向かって、
叫びたり。
波の音は、
高く、低く、
少年の声を、
呑んでしまふた。
月は、冷たく、
光り、光り、
少年の額を、
照らしてゐた。
少年はひとり、
涙を呑み、
波間に向かって、
叫びたり、
月に向かって、
叫びたり。
詩集『山羊の歌』(1934年刊行)