今朝は冷たい雨でした。少し前まで暑かったはずなのに、急激な気温の低下に体についていかない感じです。本日も、学生が多く来室して作業してくださいました。医学類の学生の方は、精神系の試験が終わり、来週は第2回ARE報告会があるので実験とポスターの準備などで大忙しです。生物学類の学生の方は12月に卒業論文のタイトルの報告があります。医療科学類4年生は、12月上旬には卒業論文の提出があります。寒くなってきたので、体調管理しながら研究に邁進したいものです。
先日、谷川俊太郎さんが亡くなられたという訃報に接しました。
日本文学界、そして詩の世界にとってかけがえのない存在であった谷川俊太郎さんがこの世を去られたことに、深い哀悼の意を表します。その詩は、世代を超えて多くの人々の心を照らし、日常に潜む真実や美しさを私たちに教えてくれました。
谷川俊太郎(1931年12月15日生まれ)は東京出身の詩人で、日本文学界を代表する存在です。1952年、詩集『二十億光年の孤独』でデビューし、以降、シンプルな言葉で日常や人間存在の深淵を描き出す詩作で広く支持されました。翻訳家としても『はらぺこあおむし』やマザー・グースなどを手掛け、絵本作家として『あいうえおうた』など多くの作品を発表。文学や芸術の垣根を越えた活動を展開し、世代や国境を越えて愛されました。
2005年の詩集『シャガールと木の葉』に収められた「脳と心」という詩があります。この詩は、NHKスペシャル「脳と心」のオープニングに使用され、人間の脳と心という深遠なテーマを詩的に描きました。詩では、「卵型の骨の器」にたとえられた脳を「傷つきやすく狂いやすいひとつの機械」と表現し、科学が進んでもなお解き明かせない脳の神秘性を描写。「謎をかけるのは私たち自身の脳」という一節に象徴されるように、自ら問いを発し、その答えを追求し続ける人間の存在を哲学的に表現しています。この詩は、科学と詩が交差する領域における谷川さんの独自性を象徴しています。
谷川さんの詩には、言葉の力だけでなく、心の奥底に触れるような優しさと強さがありました。「生きる」「二十億光年の孤独」などの作品は、時代を超えたメッセージを伝え、私たち一人ひとりに人生の意味を問いかけました。彼の言葉は、静かながらも力強い灯火のように、暗闇にいる人々に希望を与え続けました。その温かくユーモアに満ちた言葉は、これからも人々の心に生き続けることでしょう。
谷川俊太郎さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。
この卵型の骨の器(うつわ)にしまってあるものは何?
傷つきやすく狂いやすいひとつの機械?
私たちはおそるおそる分解する
私たちは不器用に修理する
どこにも保証書はない
その美しいほほえみの奥にあるものは何?
見えるものと見えないものが絡み合う魂の迷路?
私たちはおずおずと踏みこむ
私たちは新しい道標を立てようとする
誰も地図はもっていない
しかもなお私たちが冒険をやめないのは何故?
際限のない自問自答に我を忘れるのは?
謎をかけるのは私たち自身の脳
謎に答えようとするのも私たち自身の脳
どこまでも問いつづけ……いつまでも答えはない
「脳と心」

(2024年11月21日掲載)