ヒトの脳は約1,400 gの臓器であり、私たちの「こころ」と「からだ」をコントロールしています。脳の重量は体重の約2%であり、頭蓋の中に納まるほどコンパクトな臓器ですが、万物の中でもっとも複雑なシステムといえます。この脳のはたらきを解明するのが「神経科学」です。これまでに多くの研究者が脳の謎に取り組み、その複雑で「柔軟な」機能が少しずつ明らかになってきています。脳は母体内での発生過程のみならず、成長・成熟過程でダイナミックに変化し続け、ヒトの高次な脳機能発現を可能にしますが、一方でそのシステムは疾患と密接にリンクしていることが示されつつあります。

 統合失調症(Schizophrenia)や自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder; ASD)などの精神疾患は有病率が高く、根本的な治療法がなく、多くの患者さんがその症状と社会不適応に悩んでいます。これらの疾患の背景には神経回路の発生・発達の異常が存在し、遺伝的要因と環境要因との複合的な組み合わせによってもたらされます。私たちの研究室では、神経回路の形成とその機能発現、および精神疾患の病態を分子のミクロなレベルから脳の形態形成のマクロレベルまで明らかにし、治療法や予防法へと繋げることを目指しています。

 私たちの研究室では、特に神経細胞における細胞内輸送システム、免疫システムと神経系との相互作用に着目しています。細胞内輸送システムの「分子メカニズム」や「脳機能に果たす役割」を明らかにするとともに、細胞輸送システムの破綻に起因する「精神疾患の病態発生メカニズム」を明らかにしたいと考えています。また母体免疫反応の活性化が胎児の脳の発達や機能に影響し、出生後も長期にわたって影響を与えることが示されています。この知見をもとに精神神経疾患モデル動物を作出し、免疫反応の異常から神経機能の破綻にいたる分子病理メカニズムを解明し、治療法や予防法を開発につなげることを目標に研究を行っています。

 現在、卒業研究性・大学院生を募集しています。tayo.jp

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