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柔らかいものへの接触が不確定事象への期待を増進する ~社会的ストレスの低減に向けて~

本学位プログラムの武田裕司准教授(連携大学院)の研究グループは,期待を反映する随伴性陰性電位変動の振幅が柔らかいクッションを抱えている時に増大するとともに,ポジティブな社会的フィードバックに対する感情を促進することを発見し,その成果をExperimental Brain Research誌上で発表いたしました.
柔らかいものへの接触は日常生活において容易に実施できる行為であり,社会的なネガティブ感情を軽減することができれば,非常に有効な対処法になります.今後,柔らかいものへの接触による感情の促進・抑制プロセスやその生起要因を明らかにしていくことで,社会的ストレスの低減に役立つことが期待されます.
(本稿掲載日 2021年 1月 7日)
Toshiki Ikeda, Yuji Takeda. Effects of holding soft objects during Cyberball tasks under frequent positive feedback. Experimental Brain Research, in press.
https://link.springer.com/article/10.1007/s00221-020-06000-9
免疫分子が大脳皮質グリア細胞に異常を起こす ~自閉スペクトラム症の予防・治療に道~
本学位プログラムの武井陽介教授、佐々木哲也助教らの研究グループは、母体免疫活性化による自閉スペクトラム症(ASD)の発症と病態に重要な役割を持つと考えられているインターロイキン17Aをマウス脳室内に直接投与することで、脳内免疫細胞であるミクログリアの活性化とその局在変化が引き起こされることを明らかにしました。
ASDは、コミュニケーションの障害と常同的行動を特徴とする障害です。近年、ウイルス感染時にTh17細胞が産生する炎症性サイトカインであるインターロイキン(IL-)17AがASD発症の責任分子であることが示唆されていましたが、その詳細な作用は不明のままでした。研究チームでは、IL-17Aをマウス脳室内に直接投与し、グリア細胞の一種であるミクログリアへの影響を調査しました。過剰なIL-17Aに曝されたミクログリアは、通常よりも活性化した状態になっており、脳室側に寄って分布していました。さらに大脳壁の正中線付近に偏った状態になっていました。本研究は、IL-17Aのグリア細胞への影響を初めて示しました。本研究によって、免疫分子IL-17AがASDの原因となる大脳皮質構造の異常を引き起こすメカニズムの一端が明らかになりました。将来、ミクログリアを標的としたASD治療薬の開発やASD予防・治療への応用が期待されます。
(本稿掲載日 2020年12月19日)
Tetsuya Sasaki, Saki Tome, Yosuke Takei. Intraventricular IL-17A administration activates microglia and alters their localization in the mouse embryo cerebral cortex. Molecular Brain 13:93. DOI: 10.1186/s13041-020-00635-z.
紹介ウェブ記事
http://www.tsukuba.ac.jp/attention-research/p202006191400.html

サルのゲノムDNAを用いた正確なメチル化解析が可能に ~ヒト神経疾患におけるDNAメチル化解析を推し進めるための大きな一歩~
本学位プログラムの増田知之准教授の研究グループは,サルのゲノムDNAを用いたメチル化解析の正確な指標の確立に成功し,その研究成果をNeuropsychopharmacology Reports誌上で発表いたしました.
カニクイザル(Macaca fascicularis)は,ヒトの神経疾患研究に用いられる貴重なモデル動物です.しかしながら,そのゲノム配列は最近公開されたばかりであり,カニクイザルの脳におけるゲノムの状態を調べるツールはほとんどありませんでした.イルミナ社のDNAメチル化アレイ(MethylationEPIC BeadChip)は,ヒトゲノム用に設計されたハイブリダイゼーションアレイであり,ゲノム全体のDNAメチル化パターンを調べるうえで,費用対効果の高いツールです.カニクイザルとヒトではゲノムの相同性が高いため,カニクイザルゲノムへのこのアレイの適用は可能と考えられますが,これまで精度の高い報告はありませんでした.そこで私たちは,カニクイザル5匹の脳から抽出したゲノムDNAを用い,このアレイによるDNAメチル化解析を行い,公開されているデータと比較しました.その結果,このアレイに含まれる865,918個のアレイプローブのうち,183,509個のプローブ(21.2%)が,カニクイザルの脳でのDNAメチル化を調べるうえで信頼性が高く有用であることを見出しました.
(本稿掲載日 2020年12月 7日)
Yutaka Nakachi, Kazuhiro Ishii, Miki Bundo, Tomoyuki Masuda, Kazuya Iwamoto.
Use of the Illumina EPIC methylation array for epigenomic research in the crab-eating macaque (Macaca fascicularis). Neuropsychopharmacology Reports 40(4): 423-426.
http://dx.doi.org/10.1002/npr2.12145

睡眠中の脳の再生能力が記憶を定着させる ~怖い体験が夢でよみがえる仕組み~

本学位プログラムの坂口昌徳准教授の研究グループは,大人の脳で再生するごくわずかな神経細胞(新生ニューロン)が,レム睡眠中に脳で起こる記憶の定着に重要な働きをすることを発見し,その研究成果をNeuron誌上で発表いたしました.
今後,大人の脳内で新生ニューロンが睡眠中にどのように恐怖記憶を定着させるかを解明することで,脳が持つ再生能力を高め,アルツハイマー病などの神経が失われる病気や,PTSDなどの記憶処理に異常を来す疾患に対する新しい治療法に開発に応用できるものと期待されます(本稿掲載日 2020年8月26日).
紹介ウェブ記事(その他にも多数あり)
http://www.tsukuba.ac.jp/attention-research/p202006042200.html
Deependra Kumar, Iyo Koyanagi, Alvaro Carrier-Ruiz, Pablo Vergara, Sakthivel Srinivasan, Yuki Sugaya, Masatoshi Kasuya, Tzong-Shiue Yu, Kaspar E Vogt, Masafumi Muratani, Takaaki Ohnishi, Sima Singh, Catia M Teixeira, Yoan Chérasse, Toshie Naoi, Szu-Han Wang, Pimpimon Nondhalee, Boran A H Osman, Naoko Kaneko, Kazunobu Sawamoto, Steven G Kernie, Takeshi Sakurai, Thomas J McHugh, Masanobu Kano, Masashi Yanagisawa, Masanori Sakaguchi. Sparse Activity of Hippocampal Adult-Born Neurons during REM Sleep Is Necessary for Memory Consolidation. Neuron 107(3):552-565.
マウスの脳を刺激して人工的な冬眠状態に誘導する新規神経回路の発見 ~人工冬眠の実現へ大きな前進~

本学位プログラムの櫻井武教授の研究グループは,マウスを冬眠に似た状態に誘導することに成功し,その研究成果を英科学誌ネイチャーで発表いたしました.哺乳類に広く保存されているQ神経を選択的に刺激することで、通常冬眠しない動物を冬眠状態に誘導できることが明らかとなり,ヒトにも冬眠を誘導できる可能性が示唆されました.
(本稿掲載日 2020年8月11日)
プレスリリース(本学サイト)
http://www.tsukuba.ac.jp/attention-research/p202006111800.html
紹介ウェブ記事(その他にも多数あり)
https://newspicks.com/news/5107138?ref=series
https://news.yahoo.co.jp/articles/5f649f42769e4ea665dda43f12267d899b30a6b8
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本学の2020年度「教育戦略推進プロジェクト支援事業」に,私たちの取り組み「 国際基準のニューロサイエンス人材育成」が採択されました(1,400千円)
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The new student orientation was held online on April 15
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